手ぶくろには人が住んでいる。
幼い頃の話。
落としてあった手ぶくろを拾おうとしたんだ。
だけど…すぐに手を引いてしまった。
私が腰を下ろした瞬間に、何かが動いたから。
あれは確かだった。
それからこわくて一ミリたりとも動かない私にその'影'は
「な〜んだ、見つかっちまったのか。」
って言ったんだ。
すぐに走って逃げようとした。
手ぶくろが突然喋るなんて怖すぎるじゃない!
でも、あの言葉を聞いたらそんなこと思わなくなっちゃった。
「仕方ない……見つけたあなたは幸運です。」
「あなたの望みを叶えましょう。」
って!
望みを叶えるなんてさ、言われたら気になってしまうじゃない?
色々頭を巡らせてたんだけど、
「どうして?」
って聞いたの。
やっぱり、子どもながらの好奇心からなのかなぁー、
まあ今のあたしでもそうしてるかもだけど。
影からの答えを待ってる間。
だんだん光が差して影の姿鮮明になったの。
全部見える頃には、小さいおじさんがいた。
それはそれは、
赤ちゃんの手でも比にならないくらい小さな小さなお手てで、頭ぽりぽりかきながら。
「…これは俺の先代から繋げてきた"まもり"…まぁ掟みたいなものだ。
『俺を見つけた人間の願いを叶える』っていうな。」
ファンタジーとか絵本の世界が大好きだった私は、もう大興奮!!
知識というか、前から心の準備ができていた私はすぐに信じたわ!
でもね、疑問はあった。
なんで私に視えたの? とか、
どういう願いごとにしよう? とか
わるいことされちゃうんじゃないか? とか
楽しさと恐怖で小さき脳みそを、フル回転させたんだけど、
その中ふと、思い出したんだよね…。
願いを叶える魔法が現れてから、
それに対する質問をしたらそれが叶ってしまった…お話を。
だから、ここはキッパリ言わなきゃもったいないかも!!と思って…
テストで100点取れますように。とか、
佐原くんと両思いになれますように、とか
色々思いついたんだけどね、やっぱりあたしだよね〜
私はこう言ったんだ。
「あなたの、小人達の存在を忘れたくない。
だから、この時の記憶も気持ちもぜんぶ私の脳にとじこめてっ!!!」
って。
ふふ、私負けん気つよいから、
自分でできることはやる!
だから今起きた奇跡的な出来事…
大好きな絵本みたいな、私だけの思い出をずーーーーっと覚えていたかった。
これを読んでる子は、
「えーなんで?
もっとおかねもちになるとか、泳げるようになるとかにすればよかったのにって思ってたりするかもしれない。
それも素敵だけどね、私はこうかいしてないの。
ふふ…小人さんの魔法も役に立ったでしょ?
だって私が今こうしてお話しできるのは、全部小人さんのおかげなんだから♪
おわり
あ、そうそう!
実はこのお話には続きがあって…
私が願いを言った後、
「むっ!人間やりおるなっ!」
「だが願いを叶えるのは先代からの……」
ってすごいしぶしぶ?って感じで、魔法をかけてくれたんだよね。
あの時はただめんどくさがってたのかなとか思ったんだけど…
ふふ!
後から聞くとね、
小人の記憶を鮮明に覚えられる人間はいないそうなの!
だからね、普通は
「…コンコン」
あ!ちょっと待ってて。
「はーい………」
あなた
((何か喋ってる?))
・
・
・
ごめんね!お待たせ…
そうそう、だから、みんな忘れちゃうんだけどね、
私、記憶消さないでってお願いしちゃったじゃない?
だから実は
(顔を近づける)
今も遊びにきてくれてるの。
「変わらないものはない、そう思うのなら、僕と一緒に居ればいい!」
「おのずとわからせてあげるよ」
イタズラに笑みを浮かべる。
"変わらないために、変えてみせる"
案外…できてしまうのかもしれない。
…どこにも留まらない君だからこそ。
一人腰掛ける。
…昨年は楽しくて仕方がなかったはずの今日を、
今年は、悲しい気持ちでいっぱいのまま迎えてしまった。
「なーに、…みんな体験するようなことさ…」
…自分へ、言葉を贈ってみる。
一人でもいい。僕には僕がいるのだから。
つよい自分を思うと、不思議と元気が出てきた気がした…いや、元気が出たんだ、そうだ。
「カチ カチ 」
ピザはまだこない。
…すぐにでも食べれるように、お皿を出しておこう。
立ち上がった瞬間、ベルがなった。
おっ!ちょっと早めにきてくれたんだな、ラッキー!
ここ最近で、初めて!マークがつくような反応をした僕は急足でドアに向かう。
「はーい…」
「 っ!?」
イブの夜はまだ終わりそうにない。
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お久しぶりです、しっそう気味ですがたくさんの出会いを頂き嬉しいです。
ありがとうございます。
メリークリスマス🎅
NN BOX
「寂しさとは嬉しさだよ。」
笑ってそう言った彼の顔はどこか少し切なげに見えた。
「どうしてだよ!…どうしてそんなつよがるんだよ!」
言わずにはいられなかった。
俺が…くやしかったから。
なんで、悲しい顔なのに、笑うんだ。
いっつもいつも…
「おこってくれてるの?」
…。
「ありがとう。」
彼が溢れるような顔で笑いかける。
…今度は楽しそうな笑顔だ。
俺の心を読んだかの様に、彼は一人でに口を開いた。
「…でもね、本当にそう思ってるんだよ。
まあ…寂しいは嬉しいだなんてのは、少しかっこいい感じに言ってしまったけれどね?」
「それでも………。
「こんな姿だからこそ、僕たちは出会えたんじゃないか…って思うと本当に僕は嬉しいんだよ。」
「 。 」
…声が出ない。
こんな状況じゃ無理もない。
体温の低下からか、さっきからふるえも止まらない。
…廊下を通り過ぎて
「また、風邪か…」
そう呟きながらドアを開ける。
いつになったら、治るのだろうか。
君を前にすると、声が出なくなってしまうんだ。
おまけに、子じかように震えてしまって…。
…恋は病という言葉は本当なのかもしれない。
僕は、君の前でだけ風邪を引く。
風邪