「寂しさとは嬉しさだよ。」
笑ってそう言った彼の顔はどこか少し切なげに見えた。
「どうしてだよ!…どうしてそんなつよがるんだよ!」
言わずにはいられなかった。
俺が…くやしかったから。
なんで、悲しい顔なのに、笑うんだ。
いっつもいつも…
「おこってくれてるの?」
…。
「ありがとう。」
彼が溢れるような顔で笑いかける。
…今度は楽しそうな笑顔だ。
俺の心を読んだかの様に、彼は一人でに口を開いた。
「…でもね、本当にそう思ってるんだよ。
まあ…寂しいは嬉しいだなんてのは、少しかっこいい感じに言ってしまったけれどね?」
「それでも………。
「こんな姿だからこそ、僕たちは出会えたんじゃないか…って思うと本当に僕は嬉しいんだよ。」
「 。 」
…声が出ない。
こんな状況じゃ無理もない。
体温の低下からか、さっきからふるえも止まらない。
…廊下を通り過ぎて
「また、風邪か…」
そう呟きながらドアを開ける。
いつになったら、治るのだろうか。
君を前にすると、声が出なくなってしまうんだ。
おまけに、子じかように震えてしまって…。
…恋は病という言葉は本当なのかもしれない。
僕は、君の前でだけ風邪を引く。
風邪
「…はぁー」
優しく息をはく。
口の一面が白く光る。
…こんなに寒いんだ。
やらずにはいられない。
「ふふっ。」
声が聞こえた気がした。
この季節でしか、出会えないんだ。
君との思い出はたったの3ヶ月だけだったから。
もう…出会えなくっても。
君の声が聞こえるように。
雪を待つように。
今日も君との想い出を再現してる。
「キラキラしてる…。」
この季節になるといつもゆううつになりかける。
恋人がたくさん周りにいるから?
…ちがう。
鼻が詰まってずるずるだから?
…これもちがう。
……わかってる。
こんな気持ちになるのは、
本当は…きっと。
幼い頃のあの事を思い出してしまうからだ。