「もういいよ」
求めているのはただそれだけ
テレビでは児童虐待の報道
羨ましいよなあ わかりやすい苦しみの形が
自分にそう囁いている自分をひねって潰す
「お母さんのこと、大好きなんだね」
わざと苦笑で返して見せた
だって嫌いって言ったら
僕が悪いことになるから
「なんでそんなことを言うの」
そう言いたいけどわかってるよ
不安なんでしょう
僕が正解に育ってるかどうか
自分の評価基準を満たしてるかどうか
あなたの人を見る目はそればっかり
「そんなにうちが嫌か」
当たり前でしょ 辛いからいたくないんだよ
あなたの評価がこわいから
あなたたちの不安定なんか
どうだっていい場所にいたいから
「もういいよ」
心から諦められたらどれだけ楽なんだろうね
あなたたちに怯える必要もないくらい
どうでも良くなったら
それが僕の望みなんですよ
なんて、くだらない
「死ねばいい」
そう思ってしまう自分を
今日も風呂場で殺しました
「僕にとって君は幸せでいてほしい人でした。
だから、君を悲しませてしまうのは
とても悲しいけど
ごめんね
それじゃ、」
相変わらず手紙を書くのが下手なんだな、と思いながら、丸っこい字を親指でそっとなぞる。手の端がテーブルにそっと置かれた鍵に触れた。冷たい金属の感触が、かつて彼がその物体に触れていたという事実すら忘れさせようとしてくる。
部屋を見回しても、痕跡すらない。いや、一つだけ、彼が今朝使ったであろう食器だけが、彼の指紋をきっと僅かに残している。
「いなくならないで」
そっと呟いてみる。ひとり樹海に佇む彼に、この声が聞こえるはずはない。でも、言わずにはいられなかった。
彼に届けるのは、まだ間に合うだろうか。冷え切った鍵を掴む。まだ、まだ彼のいる場所がわかる内に、どうか、
この手紙を、突き返させてください。
明日世界が終わるなら、
みんなに終わりが訪れるなら、
終わりを迎える君の耳元に
「死なないで」って囁きます
明日世界が終わるなら、
みんな消えてしまうんなら、
君の鼻歌でも聴きながら
僕は黙って海でも見てます
明日世界が終わるなら、
みんなに明日が来ないなら、
生まれて初めて心から
「また明日」って言えるんです
何よりも大切な君に
「また明日」って手を繋ぎたい
君と出逢わない人生なんて想像できないくらい、
僕の人生には君が入り込んでるんだ。
だからまだ少しだけ、
僕の人生を更新してください。
君がいたから、
君にだけは、
君が僕を見てくれてるから、
僕は今そう言える。
「謝らなくていいよ」
そう言ってくれたのは君だろ?
ありがとう。
僕はあともう少しだけ、欲張ってみるよ。
そばにいて。
わからないから、こうするしかなかった。それはきっと向こうもそう。
お互いが大切で、大切にしたくて、ただ照れくさくて、大好きだとは言えないけど、決して恋人じゃないのはわかりきっていた。
でも、「付き合おう」という言葉でしか、関係性を表すことができなかった。
「ここの間でわかってればいいじゃん」
それはそうだけど、やっぱり周りから勘違いされるのは悔しい。
あのハグもキスも、ああやってくっついてみたはいいけど、本当は。
でも誰にも知られない、わかってはもらえない、そういう隠されてしまった関係性。