「私とあなたじゃ住む世界が違う 第六十六話」
カインド達は闘技場に入りました。この闘技場は、現在は使われていないのかところどころ錆びていて、植物のツルがはびこっていましたが、何とか使えるようです。
「まるで、古代オリンピアにありそうな闘技場だな。ココでスパルタクス達が劫火の如く争っていたのか…」
「何か、痛いセリフが多い少年だな…大丈夫か?」
ローズは、心配そうにカインドを見ました。
「安心して下さい。彼は厨二病キャラなだけです」
闘技場のリングに登ったローズは、レオソードを上に掲げて、
「精霊達よ、植物に生きる力を与えよ」
と、唱えました。すると、闘技場の石の割れ目から植物が生えて来て、あっという間に花園のようになりました。
「あのー、人の事言えないと思いますけどー?」
「戦いを始めるぞ!」
「うわ、人の話聞いてないな…」
「カインド、ココは俺が戦います」
アメジストは、そう言うとリングの上に上がってしまいました。
「アメジスト、大丈夫か?一般人に戻って戦え無いんじゃ…」
「安心して下さい。僕が補佐に回ります」
リゲルは、カインドにそう言うとリングの上に上がりました。
「アメジスト、仲間や健康に恵まれて何よりだよな?こんなパーフェクト人間、スゲームカつくわ…」
「セラフィの呪いが相当酷いですね…」
「他の奴はガーネットがどうこう言うかも知れねぇ。でも、俺の恨みはアメジスト、お前だ!」
ローズは、
「フラワーメディウス!」
と、唱えると、植物から大勢の妖精が湧いて来ました。
「フラワーメディウスか…記憶が消えないあの術ですね」
アメジストは、カインド達に被害が及んだらマズいと難しい顔をしました。
「アメジスト、お前は良いよな?温室育ちなら周りから怪訝な目で見られる事無くてさ…」
ローズは、アメジストを睨みつけていました。
「一人だけ、幸せな人生送りやがって…!」
ローズは、妖精達を使ってアメジストに攻撃しました。
「フェアリートリック!」
妖精達は、アメジストに向かってイタズラをし始めました。アメジストの服は穴だらけになってしまいました。
「マズイです…フラワーハニートラップ!」
リゲルは、会場に大きな花を咲かせて、蜜の香りで妖精達を誘導しました。
「そんな状態になっても、助けてもらえるのか…!」
ローズの痣は、更に酷くなりました。
「あ、そうだ…カインド、大丈夫…?!」
リゲルは、カインドの方を見ました。カインドは、無傷で傍観していました。
「リゲルさん、俺は大丈夫ですよ?」
「良かった…(無傷?)」
リゲルは、カインドの様子を見て思いました。
「(林檎のメンバーの攻撃だよね…?それを耐えられる上に無傷だなんて、この少年、なかなかの実力者だ)」
「リゲルさん、どうしました?」
「カインド、君も戦闘に参加して下さい」
リゲルは、カインドに戦いに参加するように言いました。
「…この言葉、ずっと待ってたぜ?」
「危ない!カインドは…」
「アメジストさん、まともに戦えるのはリゲルさんだけじゃ心細いじゃないですか?」
「カインドは、充分に戦える実力があります。警察官の僕が言うから間違いありません」
「…分かりました。お願いします」
カインドも戦闘に参加しました。
「林檎が揃いに揃ってガーネットって人物を挙げてるな。ガーネットは電子人形じゃなくて本当に居るんじゃないか?はたまた、誰かに存在ごと消されて伝説と化して居るのか…」
カインドは、冗談を呟きました。
「彼氏が歌い手になったら○す」
とある高校の話。女の子はよく居るタイプの女子高生で、イケメンの彼氏が居ます。女の子は、幸せで順風満帆な学園ライフを送っていました。
「今日は、ヘアアレンジ変えたの。似合う?」
「似合っているよ。可愛い」
一組のカップルが廊下で話している光景は、周りに居る生徒達の注目を浴びる程、青春の光が輝いていました。
「私達、ずっと一緒だよ?」
「何?いきなり」
「あの夜、恥ずかしい写真撮らせてあげたんだから、別れるなんて無しだよ?」
女の子は、男の子に小声で囁きました。
「あ、うん…」
男の子は、気まずそうな顔をしました。
数日後、男の子は嬉しそうに女の子の所へ来ました。
「大事な話があるんだ。聞いてくれ」
「大事な話?」
女の子は、何の話だろうときょとんとしました。
「何と…歌い手オーディションに合格したんだ!俺、遂に歌い手になれるんだ!」
男の子は、小声で女の子にオーディション合格報告をしました。
「誰にも言っちゃダメだぞ。俺が歌い手になるって言ったら、あの写真ネットに拡散させるからな」
男の子は、嬉しそうにガッツポーズをしていました。
女の子は、頭の整理をするので必死でした。彼氏がいきなり一般人からアイドルになる事、彼氏が有名になって自分より魅力的な同業者の女性に惹かれて自分を捨ててしまわないか、頭の中が交錯していました。
「彼氏が歌い手になったら、遠い人になって、手の届かない存在になったら、私の事捨てちゃうよね…止めなきゃ!」
女の子は、男の子を引き留める決心をしました。
「あのね、歌い手になったら、私以外に彼女作らない?」
「……」
「もし、そうだったら…歌い手にならないで!」
「でもよ、歌い手になるってスゴい事だぞ。普通の一般人男子でもジャニーズ張りのアイドルになれるんだからな!頼む、俺を応援してくれ…」
男の子は、女の子の意見に聞く耳持たずでした。頭の中は、輝かしい未来予想図でいっぱいだったのです。
男の子のデビューの日が決まり、男の子は女の子を呼び出しました。
「おめでとう…いよいよだね」
「ちょっと、辛い話するけど良いか?」
男の子は、真剣な表情をしていました。
「あの…リーダーに言われたんだけど、お前とは別れた方が良いって。悪いけど、友達に戻ってくれ」
「な…何で…?」
「彼女が居ると、アイドルの人気に支障が出るからだよ。ゴメンな…」
「ヒドイ…私の裸の写真、消してよ!」
「勿論、時期が来たら消すから」
男の子はそう言うと、自分の教室に戻って行きました。女の子は、ただ泣いていました。
「ヒドイ、許せない…絶対、別れない!」
突然、女の子の所に男の子の友人が現れました。
「悪いな。分かってやってくれ。アイツには夢があるんだ。本当に申し訳ない…」
「……」
女の子は、泣くしかありませんでした。
男の子のグループの初ライブの日、沢山の少女達が観客席で黄色い悲鳴を挙げていました。
「キャー!こっち向いてー!」
「俺も遂にトップアイドルの仲間入りか…大感激しか無いぜ!」
男の子達は、光り輝くステージの上で歌っていると、突然、女の子が現れてステージ上に登って来ました。
「ゲッ…」
「この変態、盗撮強姦魔!」
女の子は、持っていたナイフで男の子の心臓を一突きしました。男の子は、このまま動かなくなりました。
(本当は、彼氏って彼女である自分だけを愛してくれる存在だよね?私以外を愛すなんて…みんなの物になるなんて許せない…私の「初めて」あげた相手…私だけの物だから)
女の子は、男の子を自分だけの物にしたかった。誰かの物になって欲しくなかった。ただ、立ち尽くし、そう思っていました。
「私も、一緒に行くよ…ドロドロに汚れてるから」
動かなくなった男の子の側で女の子もナイフで男の子の後を追いました。ホール中、悲鳴が響いていました。