藤枝

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3/9/2023, 10:24:15 AM

「うん、それじゃあ」

 久々にきいた母の声にほっとしながら、私は電話を切った。

 もうだいぶ帰っていない故郷。

 きっと久方ぶりに帰省したら、私の思っている以上に懐かしいのだろう。

 そして、母もまた老いているのだろう。

 出来ることならば、時を戻して若いうちからもっと孝行したかった。

 孫を抱かせられない事を詫びたかった。

 だけど、過ぎ去った日々は巻き戻す事が出来ない。

 そんな力が私にあれば、ここまで自分を追い込むことも無かったんだろうか…




3/8/2023, 11:40:38 AM

 職場の同僚がそんな話をしていた。

「金より大事なもの…かぁ」

 いつもより力をつかう仕事を手伝ったから、今日はとても腕が痛くなり、体も汗臭い。

 私は湯船につかりながら考えていた。

 はたして自分にとって金より大事なものとは何だろうか。

「うーん」

 にゃー

「お、クロちゃん」

 風呂上がりの足元にすり寄ってきたのは我が家の一員、黒猫のクロちゃんだ。

 もの言いたげなその瞳を見ていたら、あっと声をあげ、気まずくなりながらクロちゃんの頭を撫でた。

「ハハハ…金より大事なもの、クロちゃんに決まってるって」

 にゃー


3/7/2023, 12:39:36 PM

「今月はずっと雨ばかりだったな」

 私は誰もいない部屋の中をぼーっと見つめながら、誰に言うでもなくそう発した。

 一人でいると、色々考え事をしてしまうのは私の悪い癖だ。

 そうやって精神を病んでしまうのに、やめたくてもやめられないんだから困ったものだな。

 色々な思いにもみくちゃにされた私はひとしきり泣くと、耐えられないように二階の部屋へと向かった。

 部屋の窓からは、明るい月夜が見える。

 気付けば久々の晴れた夜空。

 私は空に浮かぶ月を眺めながら、そっと瞳を閉じた。