10/22/2023, 10:15:06 AM
衣替えの季節がやって来た。まだ半袖の彼女が寒そうにしているのを見つけて、自分の羽織をかける。
「弥太郎!…これは弥太郎が羽織って。私は平気だから」
そう強がる彼女の唇は青白くなっている。
「何言ってんの。俺は男だからいいの」
俺の話し方から自分が折れるしかないと思ったのだろう。彼女は羽織を受け取った。
「そう?じゃあ借りるね。ありがとう」
二人は手を繋ぎ、笑顔で家に帰る。
10/21/2023, 12:53:20 PM
「ねえ、ゆい」
呼びかけた相手は返事をしない。
「声が枯れるまで、何度だって君の名前を呼ぶよ」
「──ゆい、ずっと大好きだ」
10/17/2023, 1:26:34 PM
「ねえ、有彩、いつになったら帰ってきてくれるの……?僕、ずっと待ってるんだよ。そろそろ有彩の顔が見たいなあ……怒ってる?もしそうなら、たくさん謝るから。サボりがちだった家事も頑張るから。だから、帰っておいでよ、有彩……」
男はぎこちない笑みを浮かべながら線香をあげる。
男の目の前には黒い仏壇と、それに不釣り合いなほど満面の笑みを浮かべている有彩と呼ばれた少女の写真があった──。