また会いましょう
そう言う機会すらも無かった。
ただそう思うだけで、
偶然歯車がかみ合うのを待つしか出来ない。
叶うことはないと分かっているけれど、大丈夫。
これは後に取っておく願い。
ずっと未来へ持ち続ける
消化されることのない希望
ススキ
少し思い出話をしよう。
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あの日ススキを見に出かけていた。
風は強く天候も降雨こそないが雲は厚く暗雲も見えていた。
昼過ぎくらいに最寄りのバスから降り、傾斜のあるそこにたくさんのススキがあった。
風に吹かれ激しく舞うように揺れながら、時より光差すススキ。
全てではないが時折見せる綺麗な景色を携帯に収める。
休憩含めて1時間かもう少しそこにいた。もっといい景色を探していた。
残念ながら夕方からは更に天候が崩れるらしい。夕日に映えるススキを見る事は叶わない。
また来るかどうかも決められないまま、冷たい風を背にバスに乗り込んだ。
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拙い文章ではありますが。
理想郷
いくつ思い浮かべただろう
何度思い浮かべただろう
全て霧散してしまった
今はもう目の前しか
見えるものは無い
昔思い描いたと
その記憶だけ
理想はもう
何も無く
今日を
過す
…
『もう一つの物語』
あの時あの道に進もうと決断していたら。
あそこで伝えようと勇気を出していたら。
あの約束をずっと守っていたら。
あの時のプレゼントをちゃんと選べていたら。
あの時言う通りにしていたら。
昨日夜更かしをしなかったら。
今日傘を持ってきていたら。
さっきトイレに行っておけば。
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長編小説か掌編小説か、
今日もまた「もう一つの物語」が小さく増えていく。
決して読むことの出来ないこの物語を、
私たちは頭の片隅に積み上げて歩いていく。
暗がりの中で、ここまで歩いた。
光は差し込まず、
ただ足元のレールの感覚を頼りに
その道筋に沿って辿ってきた。
このレールの先にあるのはきっとただの袋小路。
何も選ばなかった己の袋小路。