風邪
「あちゃー、38,5℃かー。今日はゆっくりと寝なさいよ。」
そう言うと母は、お粥を置いて出て行った。
久しぶりの熱で抵抗力の弱った体では、この頭痛も喉痛ま堪ったものではない。
世界が渦巻いて見える視界で、天井を見る。
ぐるぐると回る電気や、天井が気持ち悪い。
この部屋は和室だから、私は畳の上に敷かれた敷布団の中で眠っている。
母の消えて行った障子を見つめる。もう夜の7時だからだろう。電気はついていても、何処となく薄暗い。
風邪を引くと、どこか虚しい。
「おばあちゃん。」
3年前まで生きていた祖母は、私が熱を出すと、ずっとそばにいてくれた。
会いたいな。
久しぶりにそう思った。
私はゆっくりと目を閉じ、少しでも寝れるように心がけた。
その時、不意に外がパッと明るくなった。
まるで真昼のような光が、障子を超えて、室内に入ってくる。
なんだろうか。
不思議に思って、障子へ目を向けた時、何か狐のような影が見えた。九つの尻尾、こちらを見るような顔、
これが世に言う九尾の狐だろうか。
そう考えた瞬間、唐突に眠気が襲った。
私は抗うまもなく、眠りについた。
次の日、目を覚ますと風は完全に完治していた。
「すごいわね、あんなに高かったのに。」
お母さんが驚いて言う。
「そういえばね、お母さん。私、昨日不思議な夢を見たの。」
私は昨日見た事を事細かに話した。お狐様のような影を見た事、不思議と怖くなかった事。
「なんか、お義母さんも同じ事を体験したって、昔話してくれたわね。」
不意に母が言った。その言葉で、私はもしかしてと思った。
あの時、私は祖母に会いたいと願ったのだ。もしかしたらあのお狐様は祖母の代わりに私を看病してくれていたのだろうか。
不思議と心が温かくなった。
雪を待つ
朝、目が覚めると、隣で寝ていたはずの彼女がいないことに気がついた。
階段を降りて、リビングへ向かう。
そこで窓に張り付いて、外を眺める彼女を見つけた。
「何してんの?」
鼻声の俺に顔を向け、ニット笑って答えた。
「雪を待ってるの」
「雪?」
「そう、雪。」
そういえば、空はワタのような雲で覆われている。確かに今にも雪が降り出しそうだ。
「天気予報でもこれから寒くなって行くっていってたからさ。もしかしたらもうすぐで降るかなぁって、そう思ったら寝てらんなかったの。」
いかにも楽しげに話す彼女。
「ふーん、でもなんで雪?去年そんな楽しみにしてたっけ?」
コーヒー片手に彼女と同じように窓の外を眺めた。俺の質問に彼女はなぜか赤面した。
「?どしたの?」
俺が聞くと、彼女はスッと幸せそうな顔になった。
「ほら!去年、北海道に旅行に行ったでしょ?そこで雪合戦したり、鎌倉作ったりしたじゃん。それがさ、なんていうか、凄く楽しくてさ、、」
彼女の言いたいことが分からず、小首を傾げて続きを促すと、
「私、雪って今まで好きじゃなかったんだけどね。寒いし、冷たいし、歩きづらいし。でも、あんな楽しいの知っちゃったら、好きにならないわけないじゃん。だから、また去年みたいに遊びたいなって。」
太陽のような笑みを浮かべ、俺を見る彼女。
「ふーん、そっか。」
俺はあえてそっけない返事をし、そっぽを向いた。赤くなる顔を見られたくなかったのだ。
「雪、まだかな。俺も、待ち遠しくなっちゃったよ。」
「イルミネーション見に行こうよ!」
絶賛片想い中の幼馴染からLINEが来た
俺は窓の外から、道路を挟んだすぐそこで点灯式をしているイルミネーションを見る
「今日は点灯式だよ!」
外は大雪だ
出るだけ無駄だ
中でも見れるし、二人っきりとか気まずいし、、、
「行く」
俺バカだなって本当に思うよ
愛を注いで
足りない足りない足りない足りない
私には愛が足りない
お母さんもお父さんもお姉ちゃんも友達も
私を愛してくれなかった
心に空いている大きな穴が、幸せを簡単に取りこぼす
お願い
誰でも良いの
私に
哀れな私に
愛を注いで
心と心で通じ合う
そんなことが本当に可能なのだろうか
人間は生きているうちでたくさんの人と関わりあう
しかし、以心伝心で、言葉に出さずとも相手を理解することはできないだろう
だから人間関係のトラブルは無くならないのだ
自分が思うに心と心で通じ合うということは言わずも理解し合うことではなく、理解できない事を相手に質問し、快く答えるという関係性なのではないだろうか
人間は言葉を持っているのだから、言葉がなくとも理解するという現実的ではない、まるでアニメのような人間関係は諦め、自分の言葉で一つ一つを相手に伝える事だ
それが心と心で通じ合う最大の近道であろう