ショック表現あり
おはようリリ。
まだ起きるには早い夜明け前だけれど、明けるまで寝てられなかったかな。
俺は勿論君が心配だし、夜が明ける前にするべきことがあったからね。
寝る暇もなかった様なもんだね。
ジャラリと鳴るネックレスを首に付けてやり、少し重いかもしれないけれど前にリリに贈ったアンクレットも付けてやる。
「まだ眠いかな?寝てもいいんだよ。少し心配だけれども、苦しそうなら起こしてやるから。」
真っ暗なその髪の毛を撫で付け、寝てもいいんだと教える。
だがリリはもう寝られなくなったようで、イヤイヤとベッドから起き上がる。
昨日切断した双腕と片脚がベッド下に置いてあるのを見つけたリリは、余りのショックに気を失った。
身体を元の場所に戻してやってから、布団をかける。
夜明けにはまだ早い時間だ。夜明け前にこの四肢をホルマリンに漬け終えなければ。
することはまだまだありそうだ。
#夜明け前
ショック表現あり
高校生の頃、クラスメイトが目の前で下世話な話をしていた時。
なんでもないように会話を聞いていた。
俺は昔からそういった類の話には全然興味が湧かなかった。
女の人の裸体をこれ見よがしに載せた本や、男女が画面の前で裸で交合う映像をクラスメイトは俺に半ば無理やり見せてきた。
そんな世界もあるんだ、なんてことしか考えられないくらいには面白くなかった。
そんな詰まらない人生を送っていた高校時代だったのだけれども。
やりたいことも見つからずに、何となくで進んだ大学で人生の意味を知った。
ぼやかして言うと、SM。
対象が苦しんでいたり、痛がっているのがすごく興奮したのだ。
それから俺は死体に興奮を覚えるようになった。
一日の大半はそれについて考えていたし、目の前にそれを置いてみたいとも考えた。
大学で出会うまでの約20年弱は、常識をもってモラルを守り生きてきた為、犯罪を犯すことは割と憚られたけれども、一過性の衝動はその理性をいとも簡単に砕いていった。
あぁ、愛おしい。
人間として愛していたこの女を、全ての意味で愛することが出来た。
20年の時を経て、俺は本気の恋を知った。
#本気の恋
壁にかけたカレンダーの日にちをなぞりながら、あの愛しい人と会えるまでの日数を数えてゆく。
あと2行と、2日。
簡単に会えなくなってしまってから、そろそろ7年ほど経つ。たまにの逢瀬はあったけれど、それくらいで我慢できるようなタマじゃない。
2行と2日、あとそれだけ我慢すれば一緒に住まうことが出来るのだ。
そして、当日。
待ち合わせをしていた最寄り駅へ向かうと、7年前までは毎日のように見ていたあの人が佇んでいる。
思わず走り出してしまいそうな気持ちを抑えながら、紳士をイメージしながら声をかけた。
「お嬢さん、これから駆け落ちと行こうか?」
「…ふふ、刑務所生活は、どうだった?」
…そりゃもう、お前と会えない時間はお前がくれたカレンダーで寂しさを紛らわしたよ。
#カレンダー
ついさっき友人が数人家に来て、うちの掃除をする事になった。
粗大ゴミがすごく多くて、処理には凄く難儀しそうだ。友人の方でゴミは処理してくれるらしい。
こちらで出したゴミを処理してくれるなんて、有難いな。
ある程度ものを集めたところで、俺に手錠をかけられた。
友人である警官は、もうお前に手錠をかけたくないと悲しそうな顔をしている。
粗大ゴミは1人ずつ運ばれて行った。
死体と離れられてスッキリしたはずなのに、なんだか呆気ない。
割と死体が好きだったかもしれないな。
……と、少し喪失感を感じながら、白黒の車に乗り込んだ。
#喪失感