毎晩夢をみるのだけど、夢の中でわたしは仕事をしていたり学校に行っていたり死んだ母と一緒にいたり好きなアイドルグループのメンバーになっていたりもう離れて暮らす家族と日常を過ごしたりする。それが心地よければいいのだけど、生憎わたしは仕事が嫌いだし学生時代楽しかった思い出はないし母は怖かったし芸能人になりたくないし推しに認知されたくないし家族にはなるべく会いたくないので、大体が嫌だ、辛いと感じる。だんだんと「これは夢だ」と夢の中で気づいて、早く起きろ!はやくここから逃げ出せ!と、声にならない叫びをあげていることもある。いったいどこですれ違ったのだろう。夢の中のわたしは、現実のわたしとは対照的に楽しそうにしている(ような気がする)。わたしは、家族のことが好きだったし、楽しい学生生活を送りたかったし、子どものころはアイドルになりたかったし、母に生きててほしかった。どうしていまのわたしは素直に笑うことができないんだろう、どうして現実のわたしは上手く呼吸ができないんだろう。どうしたら、夢の中でずっと生きていられるのだろう?ああ、もう夜だ。今日も眠るのが怖いな。
忘れたくても忘れられないできごと。どうして忘れたいのかといえば一番に思いついたのが「恥ずかしいから」だった。過去のあやまちを何度も思い返してはいたたまれはくなる。どうやったってもうやりなおすことはできないのだから、すっぱり忘れてしまえばいい。同じことを友人に相談されれば「忘れよう!」とすんなり言ってしまうが、その裏には自分も何度も忘れようとした、忘れたくても忘れられないよね、考えるのをやめようとしてもやめられないよね、どうしようもないよね、ずっと辛いよね、忘れたいよね、私も忘れたいけど忘れられないの、でもそれを人に話したら今私がしたようにめんどくさそうに「忘れよう!」といわれるだけだ、落ち込んでいる人間を慰めるのは面倒くさいものだから私は自分の中で処理するけどあなたはわたしにいってくるんだよね、きいてほしいんだもんね、あなたに嫌われたらこまるからわたしは「うんうん」とあなたの言葉を遮らずに聞いて「考えてもしょうがないじゃん忘れよう」と明るくいってあげる、それしか正解がない、本当は位あなたの求める答えじゃないかもしれないけどそれはわたしには思いつかないので忘れようと言ってあげるしかない、わたしはそれが正解だと信じているけど間違っているかもしれない、こう答えるしかないと信じ込んでいてごめんね、あなたの役に立たなくてごめんね、だからあなたは離れていってしまったのね、ごめんね、ごめんね、私が正しいと思い込んでいたものは正しくなくて優しくもなくてあなたが欲しい言葉はそうじゃなくって私という人間はとても浅はかで中身がすっからかん、誰からも愛されない。そう突きつけられたこと、とても恥ずかしかった。自分はとても思慮深く、人に優しくできて、芯があって、みんなに好かれる人間だと勘違いしていたことが恥ずかしかったの。私はそんな人間じゃない。いきててごめんね。忘れたくても忘れられない、呪いのようなもの。
やわらかな光が差し込む。朝の訪れ。あたらしい日のはじまり。終わりへ向かう旅路はまた一歩進んだ。
太陽の光の届かない朝もあるだろう。急激に季節が変わった最近は特にそう思う。寒さというものは心をどんどん殺していくのだと感じる。おそらく人は、あたたかいもの、やわらかいもの、ゆるやかなものを好む。つめたいもの、かたいもの、いそぐことは穏やかとはいわない。差し込む、という表現が似合うのは、あたたかくやわらかい光のこと。朝の訪れ。まぶたで感じるもの。