「たとえ間違いだったとしても」
とある企業から声をかけてもらい、これまで勤めていたホワイト企業での仕事を捨て、転職する事になった。
役割、給与など待遇は良いが、ノルマ、仕事量が多すぎて、離職者が後をたたないと、入職後に知った。
転職、間違えたかな…と不安になった。
仕事の夢なんかも見てしまうようになった。
でも迷う度、転職を決断した時の気持ちを思い出す。
多少大変でも、もっと必要とされている所でもう一度挑戦してみたいと思ったはずじゃないか。
たとえ間違いだったとしても、挑戦せずに終わるよりはマシ。
そう信じて明日も働く。
わずかなもの
貴重なもの
かけがえのないもの
はかないもの
美しいもの
人は裸で生まれ、この世界で生きる中で必要な物を与えられ、育つ。必要な物とは食べ物や衣服であり、おもちゃ、あるいは大切な人達。
それらが周りに在る事は実に自然な事であり、若い時分はそれらを失う事など想像すらしない。
私は今、四十台の半ばで人生の折り返し地点にいる。
きっと人生の最期の瞬間は、やり残した事を後悔したり、家族や大切な人を想ったりするのだろう。
そして人生は「思い出」で出来ている事に気がつく。
地位や名誉、高価な物など何も要らない。
ただ大切な人との「思い出」だけが、ずっと遺ればいい。
覗いた未来にまだ私が生きているとしたら、私のいない場所だけを覗いてみたい。そして、世の中がどんな風に進化しているのかを知りたい。自然は残っているのか、人間は優しいか、AIに支配されてはいないか…そんな事を見てみたい。
私がどうなっているのかという事は、見たいようだけど見たくない。未来が望む姿であろうがなかろうが、ネタバレ後の人生なんてつまらないし、人生の岐路らしき場面に立たされたとしても結末が分かってしまえば悩む価値もなさそうだ。
覗いた未来にまだ私が生きているとしたら、私のいない場所だけを覗いてみたい。