フリーらしいよ
聞こえてきた声に、胸が高鳴り躍る
あなたは、手の届かない存在で
声をかける勇気のない私に気付いてくれる事はない
だから
誰のものでもないという安心と
いつか誰かのものになってしまうという不安が
同時に押し寄せては、臆病な心を震わせる
またね、と言った僕の顔は夕陽の悪戯のおかげで
きっと君には見えてなかっただろう
果たせるかも分からない約束を
守ることに必死で僕は生きている
また、病気と副作用に身体が蝕まれていく
次はいつ会えるのか
カレンダーを眺め、深い深いため息をつく
明日、世界が滅亡する
あの子を虐めていた子は
悲劇のヒロインのような顔をして
一目散にどこかに駆けて行った
争いを続けていた両国の人間は
途端に争いをやめて自分の国へ帰った
残されたあの子は
残された人々は
その絶望を喜んだ
なんて、夢を見た
夢の中のあの子と私が重なって
現実ならどれだけ良かったかと嘆いた
いつだってそう、
みんな自分のしている事を正当化するのに必死で
弱者の声は、まるで届かない
過去に戻って間違いのない選択をとか
未来で起こる嫌な事を回避できるとか
例えどんな誘惑が聞こえてきたとしても
きっと何度でも、同じ人生を巡るだろう
不器用で、下手くそで
上手く生きることができない
人より何倍も遠回りをする生き方を
今を、私なりに楽しんでいる際中だから
いつもと同じ時間、いつもと同じ場所
待ち合わせなんてしていないけど
ソワソワと君の帰りを待つ
待ちくたびれて壁に背中を預けた時
コツコツと近付く足音
ああ、すぐに分かる君の足音
今日は気分良く高いヒールを履いて行ったよね
帽子を目深に被りなおす
僕の横を君が通り過ぎる時に
君の香りと僕の匂いが重なる
君は気付かない、同じ香りをさせる僕に
部屋の電気がついた事に安心すると
足早に立ち去る
ただ、君に会いたくてしょうがない
この衝動の止め方が分からない