特別な夜。それはキミと居る夜。長くも短い、甘美で艶めいた、愛おしい夜。
特別な夜。それはキミを想う夜。悠久の如く長くはあれど、不思議と満たされている夜。
特別な夜。それはキミの居ない夜。そばに居るのが当たり前になっていた夜。
特別な夜。それはキミへ願う夜。どこに居たとしても、キミが誰を想おうとも、キミの幸せを願う夜。
特別な夜。
ひらりはらり。黄土には少し満たない色が空を舞い、湿った地へと落ちる。それに見惚れていたらまた、シャッターにかけていた指を動かすのを忘れてしまった。
枯れた草木や葉、花でしか感じられない哀愁混じりの感触。それに魅入られてレンズを構える秋の暮れ、もう3年になるが未だ納得の行く一枚は撮れていない。
それはきっと私自身が、心動かされる瞬間と言うのは前後の脈絡があってこそだと、どこかで感じてしまっているが故なのだろう。
もちろん一枚の写真で感動することだってある。しかしそこに自分の手が加わるとなると、どうしたって納得できないものだ。
思慮を巡らせていたらまた、目の前で一枚。音もなく、濡れた足元へと茶色いそれが落ちる。まるで私を見ているような、渾身の一枚なんて撮らせないぞとでも言いたげに、眼下のひとひらはそこに在る。
ひゅうるる、思わずコートを深く着被る。冷たい風が吹いた。目の前にあった枯葉は、冷えた空気に攫われて、何処かへと吹いていったらしい。どうか、かの葉が最後に見る景色が、雨傘の葉の裏でありますように。
どうして
貴方の、その言葉を信じて振る舞い、その言葉を信じて笑い、その言葉を信じて歩んだ。
貴方の、その言葉に当てられて頬を染め、その言葉に充てられて涙を流し、その言葉に中てられて満ち足りていた。
なのに
一歩歩んではふわふわの雲。
二歩歩んでは木漏れ日の唄。
三歩歩んではうたかたの波。
四歩歩んではことりの囀り。
五歩歩んでは自動車のおと。
六歩歩んでは冷たいふとん。
……引きかえそう。ここは私の居場所じゃない。