半袖を腕まくりして、二の腕全開。
そこに、一匹のカエルのタトゥー。
「なんで…カエル?」
可愛いイラストの感じのカエル。
タトゥーとして入れるには似つかわしくない。
「別にいいだろ。若気の至りだよ」
「どんな若気だよ。カエルが好きなの?」
「そりゃ嫌いじゃないけど…このカエルは特別」
黄色くて、目がデカくて可愛い。
ニッコリ笑っている。
「特別なんだ。名前とか、あるの?」
「名前は…ピョン吉」
「…ん?なんか聞いたことあるな」
「昭和の頃のアニメに出てきたカエルだよ。Tシャツにプリントされてて…生きてた」
「生きてた?プリントされてて?」
「まあ、実際には、主人公のヒロシがつまずいて転んで、そこにいたピョン吉が潰されてペチャンコのまま、Tシャツに貼り付いてしまうんだ。それから、平面ガエルとしてヒロシのTシャツで生きることになる」
「なんだそりゃ。昭和ってハチャメチャだな」
「サブスクで見たんだよ、何の気なしに。そしたら、ハマっちゃって」
「…なんで?そんなに面白いの?」
「面白いし、ピョン吉が好きで。それで、このタトゥーを彫った。Tシャツは脱がなきゃいけないけど、これならずっと一緒にいられるから」
「嘘だろ。突っ走りにもほどがある」
「まさに、突っ走るんだよな、こいつ。何しろ『ど根性ガエル』だから」
「…どーゆーこと?」
「いや、だから…」
言葉の途中で、彼は走り出した。
もの凄い勢いで、駅前のたこ焼き屋台に向かって。
こいつ、そんなに腹減ってんのか?とも思ったけど、彼の二の腕の一部分が少し、盛り上がっているように感じたのは…気のせいだろうか?
もしも過去へと行けるなら、2001年9月11日以前とか、2011年3月11日以前に戻りたい、という人は多いんだろうな。
もう会えない人に会えるから。
こんなことになるとは思ってもいなかった人達に。
私は…過去を楽しむのは、写真やビデオだけでいいと思ってる。
戻りたいとは思わない。
若くて恋をしていた頃はイイ時代だったけど、きっとその頃にはその頃の悩みがあった。
年相応の悩みだ。
今だったらきっと、即座に解決できるようなものかもしれない。
でも当時は、未熟であるが故に八方塞がりの状態で苦しんでいた。
あの苦しみをもう一度味わいたいとは思わないし、かと言って、簡単に打破できる今の知識をもってスルーしたいとも思わない。
あれはあの頃の私にとって、必要な試練だったんだと思う。
だから、今がある。
まあ、あの頃の友達に会ってみたい気持ちはあるかな。
もう、会わなくなってしまった友達。
今頃どこでどうしてるんだろ。
当然、私と同じようにおっさん、おばさんだ。
あの頃に戻るのではなく、今の彼らに会ってあの頃の話をしたいとは思う。
そうすることで、きっと私は過去に思いを馳せることが出来るだろう。
それだけで十分。
…まあ、その願いもなかなかに叶わないわけだが。
True Love…真実の愛。
愛なんて、よく分からないもの。
いろんな形があるし。
何が真実で、何が偽りなのか。
例えば、「美女と野獣」はラスト、美女とイケメンでめでたし、めでたし。
ベルが愛したのは、その見た目も含めた野獣だったんじゃないのか?
愛した人の姿が変わってしまって、さぞ悲嘆に暮れているのでは?
決してめでたしなんかじゃない。
ストーカーは、真実の愛じゃない?
ストーカーされてる側が相手に惚れたとしたら、これほど熱愛のカップルはそういないんじゃないだろうか。
一方的だが、真実の愛には違いないのでは?
反論もあろうかと思うが、歪んでいてもその想いは本物だろう。
そもそも、ストーカーと推しピは何が違う?
相手側の思惑の違いだけだったりしないのか。
結婚歴も20年を超えたが、熱情に浮かされたりしたこともあった。
自分が、恋愛映画の主人公と勘違いした時もあっただろう。
まあ、それを恥じるつもりもないが、今思えば、若気の至り。
ようやってたな、って感じ。
これぞ真実の愛、なんて思い込み激しい時もあったかな。
今では、そこにいて当たり前の存在。
空気のようなもんだ。
だけどまあ、世界で一番大切な人達であることは確かだな、今でも。
これこそが、True Loveの形、と言えるだろうか。
きっとこの想いは、死が分かつまで変わらない。
いや、分かたれた後も消えることはないだろう。
恋心なんかじゃなくて…真実の愛情ってやつだ。
それは、相手の欠点や相容れない部分もすべて受け入れた上で、まあいっか、と思える感情なんだと思う。
恋愛映画のような盛り上がりなんか無くて、淡々とした時間をともに過ごせること。
これがあれば、生きていける。
実現しない、またいつか。
誰もがたくさん持っていると思う。
実現したい、またいつかも、忘れてしまった、またいつかも。
通り過ぎて、遠ざかってしまった人達。
今頃は、どこで何してるんだろう。
私のことを覚えていますか。
あんなに楽しかったのに、いつまでも続くと思っていたのに、またいつか、その言葉ひとつで離れてしまった。
そのいつかを決めないままで、お互いが連絡をくれることに期待して。
いつか、なんて、いつでもない、未来。
約束ではなく、単なる夢物語。
現にあの人達は、私の夢の中で彷徨っている。
もう、忘れてしまったよね。
あなたにとって、それほど必要な存在ではなかった。
私がいてもいなくても、あなたの人生は順調なのだろう。
私だってそうだ。だから、悲しくも切なくもない。
ただ、またいつか会えるかなと、その言葉に期待を乗せてしまうだけ。
いっそのこと、さようなら、で別れれば良かったのに。
またいつか。
遠い未来。
訪れることのない未来。
そんな場所まで、彼らを先送りしてしまう、言葉。
だけどそこに、ほのかな期待と優しさを含んでいる。
またいつか。
またいつか、会おう。
会いたいね。
星を追いかけて
掴み取ってその輝きを手に入れろ
星を追いかけて
歪んだ宇宙の真実を暴き出せ
果てのない宇宙 人の気を狂わせる
呼吸も出来ずに 彷徨い続ける屍のように
星を追いかけて あてもなく追い求めて
辿り着いたその星を 誰かが地球と呼んだ
故郷を捨てた者達の故郷 歪んだ宇宙の真実
星を追いかけて
生き残ってその奇跡を手に入れろ
星を追いかけて
歪んだ宇宙の真実を洗い出せ
愛のない世界 人の身を震わせる
思いやれずに いがみ合う心の冷たさに
星を追いかけて 何かが変わると信じて
辿り着いたその星は 地球の名を借りた地獄
故郷は遥か遠い宇宙の果て 壊れたガレージの中で
追いかける星の名はタイオニア
支配され 放置され 処分され
生きる術はもう ガレージセールを避けるのみ
愛のない世界 人の身を震わせる
思いやれずに いがみ合う心の冷たさに