3つかぞえて

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1/25/2023, 10:39:03 AM

 僕の中で安心材料にしていいのは餅だけだった。生まれた時から餅が隣にいてくれた。歳をとっても数多くの餅を食べたのを覚えている。一日に2切れは必ず食べていた。それもいろんな食べ方を試した。僕の冒険心を受け入れてくれるのは餅だけだ。だが就職後は正月にすら食べなくなってしまった。そんなある日。餅をうっかり「みち」と噛んでしまった。
 一瞬で僕の安心は消えた。餅に支えられていた均衡が今外れた。自分がどこにいるのか分からないことを思い出した。これから僕はどうなるんだ。ここにいて正しいのか。何も知らない、何もかも分からない。分からなくなった。

1/24/2023, 11:42:43 AM

『逆光』
 先程はとんでもなく眩しかった。なんせ頭の真上に見えた陽が、見たこともないくらい強く眩く光っていたんだから。今は君の後ろにある。
 今思えばおかしな話だった。今は真冬だ。太陽が頭上に来ることなんてない。ああ、変わってしまった。やってしまったんだな人間は。この地球は神が創ったらしいのに、創り物が自我をもってそれを壊そうものなら、せめて自分で壊させてくれというであろう。あの光の玉は神が降らせたものだった。
 君は何も言わなかった。悟ったような私を見てから、食べかけのおにぎりをカバンにしまった。コンビニの裏口に忍び入り、ゴミ箱からくすねたおにぎりだった。丸2日ぶりの米はうまかった。
 しかし君は、これは太陽ではない、と。そう聞いて妙に納得がいったのは不思議だった。
 眩い光は天罰の象徴らしい。あんなに星のように美しくても、神に背負わされた使命は懲罰だった。あと一寸、この眩い光の玉が地球に降りれば、この世は終わる。私の意識はそこで途切れている。あれから何年経っただろう。今、私の新鮮な灰白質の裏で、君が微笑んでいるのを見ている。狂いそうだ。

1/23/2023, 1:30:09 PM

 こんな夢を見た。
 一冊の本があんたにちりぢりにばら撒かれた。せっかく初任給で買ったのに。あんたの方がええ銭稼いどんのに。ため息が出ても仕方ないけど、ばら撒いたあんたが金くらい払ってくれたって良いのに。私が頑張って日頃から勉強して、ついに迎えた試験日当日、あんたは全裸で外に出て捕まっていた。捕らえてこっそり睾丸をひとつだけ潰してやった。
 でもどうせ夢だった。あんたは今日出勤していたけど、股間から流血していた。昨日より歩きやすそうだったじゃない。私の『1984年』をばら撒いたあの日よりも。