傘を忘れた放課後に
教室の隅で雨宿り
ノートの隅に描いた落書きを
魔法の消しゴムでこっそり消した
使い切ったら 想いが届く と
君の名を綴じ込めた 真新しい消しゴム
早く使い切りたくて
何度も何度も
描いては消す
傘の下に並ぶ
あたしときみの名前
【相合傘】
大きめの傘に二人で入るとき
背の低い私に傘を持たせてくれるわけもなく。
片手に荷物、片手に傘を持つから
あなたの両手が塞がる。
私の手は寂しがって
家に着く前に我慢できなくなって。
その手が傘の柄をぐいっと引けば
30cm上にあったあなたの顔が
傘と一緒に私の目線まで下がってくる。
驚いて見開いたあなたの瞳と
近づいて閉じた私の目。
大丈夫。
ちゃんと隠せてる。
重なったくちびるは、傘に。
このドキドキは、雨音に。
ギリギリに立つから
落ちるのが怖いんだ
飛び込んでしまえば
受ける風も気持ちいい
大丈夫
落ちた先で
砕けても弾んでも
着地までに見えた景色が
そのあとの世界の
色を変えてくれるから
【落下】
きみは、なにを描く?
【未来】
小学校に入学した年
創立100周年記念にと、全校生徒でタイムカプセルを埋めた。
25年後に掘り起こしたそのカプセルに
私が入れていたものは
よくわからない作文と
描いた覚えのない絵。笑
6歳の私に
『未来に残したいもの』は難しすぎたんだ。
今ならもっと。
もっともっと。
描きたいものがたくさんあるよ。
そういえば。
前日の【1年前】ってお題に
私は未来を想像したんだった。
未来の私から見た
1年前の今日の自分が
輝いて見えたらいいな と。
過去も未来も
愛せたらいいな と。
一枚目は紅色の着物に照れて
二枚目は誕生日ケーキの蝋燭の火に喜んで
三枚目は満開の桜に見とれて
四枚目は風に揺れるチューリップに微笑んで
五枚目は温泉旅館の御膳に手を合わせて
六枚目はホタルのひかりに目を潤ませた
1月から始まるカレンダーは
めくるたびに去年のきみを連れてくる
この一枚をめくったら
どんなきみに出会えるかな
来年のカレンダーも
その先のカレンダーも
ぜんぶきみで埋まればいい
【1年前】
表紙の内側にオルゴールが埋め込まれた絵本
祖母がプレゼントしてくれたその本が
私のお気に入りだった
優しいメロディーをBGMに
母が読んでくれた『三匹のこぶた』
あれを超える名作を
私は知らない
【好きな本】