あぁ、空よ
あなたはどうしてそんなに遠いの?
あぁ、土よ
あなたはどうしてそんなに冷たいの?
あぁ、風よ
こんな所に囚われた私を早く連れ出して。
お題 鳥かご
時の流れは驚くほど早い。
幸せに気づく暇もないまま、今日が過ぎていく。
嬉しさが溢れて眠れなかったあの日も、枕を濡らして迎えたあの夜も、どれもどれも大切なあの日。
どんなに嫌なことがあったって、すべて時間が解決してくれる。
歩くっていう字は、少し止まるって書くらしいから、
今日は少し止まってみる。
歩き方を忘れるほど止まってたっていい。
1年後、2年後3年後にまた歩き方を教えに来るから、それまではゆっくり休んでね。
「大丈夫だよ」
「私はどっちでもいいよ」
「ごめんね」
優しいね。心が綺麗だねってずっと言われてきた。
でも、この言葉たちは、そんな素敵なものじゃない。
私が私を守るために、吐き続けてきた言葉。
私の心は綺麗なんじゃなくて、弱いだけ。
今の私は、ずっと現実から逃げてきた結果の塊。
本当の自分なんて、とっくの昔に見失った。
嘘をつき続け、愛想笑いの上手になった私も、本当の私なのかもしれない。
そんな私を愛せるのは、私だけ。
私は今日も私が好き。
「ごめんね、泣いちゃって」
別れ話の途中、彼はそう言って笑った。
必死で気づかないフリをしていた私にとって、その言葉は鉛のように重く、心底どうでもよかった。
「もう会えないの?」
震える声で彼は言った。マンホールの蓋を開けてしまったかのような感情に私は困惑する。
どれだけ多く言葉を交わしても、どれだけ長く電話を繋いでも、通じないものはある。
「彼に会いにいく電車に乗る度、私はいつも心臓を突き刺されたかのような痛みを憶える」
彼に会ったら、どんな言葉をかけよう。
どうやって笑おう。
そこには、焦りと恐怖しかなかった。
「手を繋いだ。人生で初めて。」
右手に緊張が走る。手も心臓も、握りつぶされるような感覚を覚えた。
手を握りあっているのに、仕合わせではなかった。
私たちはもう、終わったのだ。
日が暮れ、冷たい風が胸を撫でる。
その日私は、3ヶ月ぶりにゆっくりと眠ることが出来た。
ベットに吸い込まれる。
ため息とともに、深く深く堕ちて行く。
真夜中の戸を叩き、追い出されるように朝になる。
「あぁ、また今日も生きている。」