『風の払暁』
夜風は生きている者の身も心も凍えさす
太陽という存在がいなくて
寂しくてたまらないのだ
夏は太陽が一緒にいてくれる
時間が長いからまだマシなほう
冬は夜が長いから
寂しさを埋めるため
ところかまわす当たり散らす
風は夜明けをいまかいまかと
健気に待っている
"夜明け前"
テンはキジトラの猫で、優雅に森を歩く姿はまさに王者そのものだった。彼の毛並みは森の景色に溶け込みながらも、彼の瞳はいつも鋭く光り、何事にも満足することなく、自分だけの完璧な快適さを追求していた。その日、テンはまた村を訪れることに決めた。人間たちが住むその場所には、いつも雑多な空気が漂っていて、テンにとっては不快だった。しかし、そこで彼は何かを見つけようとしていた。
村に入ると、テンは村人たちに堂々と声をかけた。「おい、人間ども。俺の命令に従え。」その一声に、村の人々は驚くどころか、顔を輝かせながら一斉に答えた。
「もちろん、テン様!何でもおっしゃってください!」
テンはその反応に満足げな表情を浮かべ、少し誇らしげに尾を揺らす。「まずは、俺のために完璧な食事を用意しろ。それから家を整えて、俺が寝る場所を最高にしておけ。」
村人たちは、無言でその通りに動き出した。食事はテンの好きな魚を使い、家は彼の快適さに合わせてすぐに掃除され、寝床も最も柔らかいものに変えられた。それだけでは足りないとテンは続けた。
「俺が歩く道も、整えておけ。どんな小道でも、完璧に整備しろ。」
「はい、テン様!すぐに手配します!」村人たちはテンの命令に次々と従い、どこまでも尽くしていった。その顔には、恐れではなく、喜びが浮かんでいた。彼らは、テンが自分たちに命じることで、逆に満たされるような気分になっていた。彼が快適であれば、彼らもまたその一部となり、同じ快適さを享受できるかのような錯覚を抱いていた。
テンは心の中でほくそ笑む。人間たちは、彼の支配にすら喜びを見出し、忠実に従っていく。これこそが、自分の理想とする「快適な世界」だと確信した。彼にとって、すべてが完璧であることが最優先だった。村は次第にテン専用の楽園へと変わり、人間たちはその支配を喜んで受け入れていった。
テンは自分の王国を築き上げた。そこでは、彼が快適でいられる限り、すべての人間がそのために尽力し、彼の命令を喜んで聞き入れる。テンにとって、世界は自分だけのものとなり、彼の支配は永遠に続くのだった。
『カレンダー』
2072年のカレンダー
自分の誕生日に花丸をつけた
これはわたしの死亡予定日
人生の終着地点
日本の平均死亡年齢は
男性が81歳、女性は87歳らしい
早い、遅いはあるけれど
だいたいこれくらいの年齢で
みんな死ぬ
家族だって恋人だって
恩師だって友人だって
例外はない
終着地に到達したときに
笑っていられるように
愛する者たちと同じ時を時代を過ごせる
奇跡を感じれるようになるために
わたしは花丸をつける
鼓動のリズムは生と命を
我々に認識させる
母の鼓動を聴いていたころの安心感を
血が巡る温かな身体を
愛する者が生きていることへの感謝を
鼓動一つで感じることができる
鼓動のリズムは着実に
時が経過していることを
我々に認識させる
老いの恐れ
病の恐れ
死への恐れ
愛する者と別れることへの恐れ
時には限りがあることを
鼓動ひとつで感じることができる
いまという時を大切に
命のビートを強く刻んでいけ
"鼓動"
『踊るように』
キレてる!
腹斜筋で大根おろしたい!
腹筋がカニの裏!
肩にちっちゃいジープ乗せてんのかい!
肩から脚が生えてるよ!
親の大胸筋が見てみたい!
背中にクリスマスツリー!
デカすぎて固定資産税がかかりそうだな!
新元号は、筋肉です!
筋肉の品評会
踊るような筋肉
踊るように観客は熱狂する