電車が迎えに来た
今日はいつもより
空が明るい
田んぼから住宅街
住宅街からビル
移り変わる景色
紫色の夕焼け
それらをぼんやり眺めていた
電車が地下に潜り
パチッと明かりを消したように
窓越しの景色は暗闇になった
代わりに見えたのは人
セットしたであろう
髪は崩れて、
今日も頑張ったのだろう
顔から疲労が見てとれた
頑張ったね 今日もお疲れ様と
声をかけようとするが、
彼女はいなくなる
代わりに見えたのは
優しく包むような月と
温かみのある街の光
改札を出て 家に帰ろうとする足は
コンビニに向かった
少し高めのプリンを買って
心で呟く
「今日もお疲れ様」
〜窓越しに見えるのは〜
自分の手を見る
運命の赤い糸
先に誰がいるのか
そもそも結ばれているのか
分からない
しかし、
指には沢山の糸が巻かれていると
そう感じる
この学校に行ったから
出会えた友達
あの時勇気を出して踏み出したから
出会えた先輩.同僚
あそこであぁしていたから…
縁は沢山結ばれている
刺繍糸や毛糸、今にも切れそうな糸
人生を紡いでいく間に
切れたり、切ったり、
結んだり、結んでもらったり、
解いたり、編んだり
そして、最後に人は
大きな糸玉になるのだろう
出会えたのは偶然
でも、偶然にしては出来すぎている
そんな偶然に「運命」なんて名前をつけて
愛おしく思い
自分は仕合せ者だと
糸の先にいる人々に感謝し
自分の手を握る
〜赤い糸〜
平日 昼下がり
都市郊外へ向かう電車
人気は少なく
並ぶ住宅は眼下にある
ふと、スマホから顔を上げる
スクリーンいっぱいに映るは
青色背景に積乱雲
そこは特等席となった
意識が
景色に飲み込まれていく
しばらくして、辺りを見渡す
数少ない乗客は
スマホに夢中だったり、
夢の中だったり
今 この景色を独り占め出来ている
その贅沢さを噛み締めて
もう一度スクリーンに目をやる
「ビルや電柱もない昔の広い空に
こんなに大きな雲が現れて
大雨が降らされたんじゃ
"入道"なんてつけるのも分かるな」
そう考えてから
再びスマホに目を落とす
〜入道雲〜