阿利枝

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6/29/2024, 11:10:19 PM

【入道雲】

 窓の外に見える青空と、もくもくとわいた雲を見て「わたあめ」を連想する。知らないことばかりだった幼い頃も、雲が発生するメカニズムを知っている今でも、抱く印象は変わらない。そういえば昔、どんなにせがんでも屋台のおおきな綿飴は買ってもらえなかったっけ。そんなことを思い出した。

6/28/2024, 10:26:42 PM

【夏】

 毎年、夏が来ることに恐々としている。
 暑いのもつらいが、気づくと側にいるでっかい虫が怖い。田舎住まいなのに虫が苦手なのは変わらず、遭遇したら逃げ回るばかりだ。
 ドラッグストアで虫除けを眺めるのが恒例行事になってしまう季節、夏。

6/27/2024, 11:37:59 AM

【ここではないどこか】

 RPGの世界が好きだ。家にいながら、全く知らない場所を冒険できる。それが楽しい。
 本当は近場に遊びに行くとか、観光地を巡ったりしてみるべきなんだろう。外の世界で得る経験は何物にも代えがたい――のは重々承知だが、地元の路線バスが観光客でぎゅうぎゅうになっているのを見ると、「家でいいかな……うん」と思ってしまう。それなりの年齢を重ねても、相変わらず人が多い場所はしんどい。そして今日も現実から離れるべく、ゲーム機のスイッチを入れるのだ。

6/26/2024, 1:25:37 PM

【君と最後に会った日】

 転職して以降、お客様の訃報を聞くことが増えた。
 つい数日前に電話で話をしたのに、来店した時には元気そうにしていたのに、なんて風に。
 出会いがあれば別れは必然、それを割り切るにはまだ私は若すぎるのだろう。

6/25/2024, 11:24:43 AM

【繊細な花】

 あれは確か、その時期にしてはやたらと蒸し暑い頃だっただろうか。休日明け、職場の玄関先の鉢植えの花がくったりと頭を垂れていた。
 これはイカン、と慌てて水を遣ったが、「人の手が加わるものはか弱くなるのかなぁ」と思っていた。花弁が重くてたまらないのだと言いたいかの如くしなった茎に、花の繊細さを感じていたのだが――私が仕事に追われている間、草臥れた風情だった花は少しずつ、ゆっくりと体を起こしていたのだ。もちろん完全に元通り、というわけにはいかなかったが、再び空を仰ごうとするその生命力には驚嘆させられた。
 繊細な存在だからといって、その命が弱く儚いものではないのだと。ふとした瞬間にそれを知る、日常とは「気づき」の連続なのだと改めて思った。

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