阿利枝

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【繊細な花】

 あれは確か、その時期にしてはやたらと蒸し暑い頃だっただろうか。休日明け、職場の玄関先の鉢植えの花がくったりと頭を垂れていた。
 これはイカン、と慌てて水を遣ったが、「人の手が加わるものはか弱くなるのかなぁ」と思っていた。花弁が重くてたまらないのだと言いたいかの如くしなった茎に、花の繊細さを感じていたのだが――私が仕事に追われている間、草臥れた風情だった花は少しずつ、ゆっくりと体を起こしていたのだ。もちろん完全に元通り、というわけにはいかなかったが、再び空を仰ごうとするその生命力には驚嘆させられた。
 繊細な存在だからといって、その命が弱く儚いものではないのだと。ふとした瞬間にそれを知る、日常とは「気づき」の連続なのだと改めて思った。

6/25/2024, 11:24:43 AM