『街へ』
寺山修司の著作で『書を捨てよ、町へ出よう』という本があった。
読んだのは随分と昔だが、面白く感じたのを覚えている。
で、この題名って元ネタがあるんだよね。
アンドレ・ジッドの紀行的詩文集『地の糧』に出てくる言葉で、書斎に閉じこもらず、旅に出て生の感覚を取り戻すことの重要性を説いている。
今日のお題の「街」の字は、商店やビルが立ち並ぶ賑やかな通りのことだから、より人と交わる若しくは多くの人を観察することになりそうだ。
たまにさ。
普段は人と関わるのが億劫なのに、本当にたまに、物寂しく人恋しい気持ちになることがある。
そういう時にふらりと街へ出てみるんだけど、当然周りは知らない人ばっかりで、いきなり話しかける不審者にもなれず、すごすごと帰ってきちゃうんだよなぁ。
『優しさ』
なぜ「やさしさ」という言葉を「優しさ」と書くのだろう。
「亻(にんべん)」+「憂」
にんべんは人、右側の「憂」は心が沈んで「うれえる」「心配する」様子。
誰かのことを心配し、思いやる気持ち。
それが「やさしさ」なのかな。
損得なしに誰かを思いやるのって、家族や友人にはできるけど、それより関係が薄い人にはなかなかできない。
でも、配慮や気づかいは忘れたくないよね。
『ミッドナイト』
深夜零時、街の騒めきが嘘のように息を潜めた頃、私はいつものようにとあるBARの扉を開ける。
カチコチと時を刻む古時計。
黙々とグラスを磨くバーテンダー。
客は、私ひとり。
「いつものやつを」
差し出されたのは、夜空を溶かしたような深い紫色のカクテル。
一口飲むと、意識が少しずつ現実から剥離していく。
ここでは、昨日と今日の境界線が曖昧になる。
やり残した後悔も、明日への不安も、この琥珀色の灯りの中ではすべてが等しく「過去」として許される気がした。
「またのお越しを、お待ちしております」
店を出ると、冷たい風が頬を撫でた。
振り返ると、そこにはもう看板も扉もなかった。
ただわずかなアルコールの熱だけが、口の中に残っていた。
『逆光』
寒風吹きすさぶ冬枯れの中で、咲いている花があった。
夕暮れ時で辺りは薄暗い。
スマートフォンを向けてシャッターを押したが、画面の色合いが暗く、輪郭もなんだかボヤケて写ってしまう。
でも、撮りたいんだよなぁ。
震えながらも健気に咲くこの花を。
少し考えてから、夕陽をバックに撮ってみた。
グラデーションがかったオレンジ色の空に浮かび上がる、影絵のような黒い花影。
うん、素敵。いい感じ。
画像を保存して家路を急いだ。
『こんな夢を見た』
おや、漱石の『夢十夜』か?
今日のお題を見て、まず思ったことだった。
こういうお題の時は、みんなの見た夢の話がいろいろ語られて面白い。
よく、「人の見た夢の話を聞くのは退屈だ」という言葉を聞くけれど、それは取り留めもなく、整合性もオチもない話を聞き続けるのに飽きてしまうからだろう。
文章化されたものは、不思議系のショートショートのようで興味深い。
そう思いながら、みんなの投稿を読んでいく。
ふと、ある投稿に目が止まった。
そこに書かれているのは、昨夜私が見た夢だ。
目覚めると記憶が薄れていくのが当たり前の夢の中でも、一際はっきりと覚えている夢。
その人の過去の投稿も読んでみる。
あれも、これも、全部全部、私が体験したことや、言ったこと、やったことばかり。食べたものや、買ったものまで。
これは、いったい――
そんな夢を見た。