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10/8/2025, 8:22:21 AM

【静寂の中心で】

静寂の中心で、ぽつりと佇む。
君はもういない。君の生はもうここにない。
―――君は、今世の全てを終えたから…。

此度もまたかすり傷ひとつ残らなかった。忌々しいほど滑らかで、規則正しい振動を重ねる。けれどそれでも君は無駄だと知っていて、また繰り返すのだろう。

…いいよ。君と違って私には永遠がある。また君を探すのは大変だけれど、なにすぐに見つけてみせるさ。
君は私にとって………なんだ? 
うーん…退屈しのぎのひとつかな?
それでも君と過ごす時間はとても楽しいから、まあいいか。それこそ退屈なぞ無縁だよ。

―――ああ、また歯車が回り始めたね。
これで君もまた新たな生を受けるだろう。
…さて、それでは君を探しに行こうか。

ここは………静かすぎるから。

10/7/2025, 8:20:00 AM

【燃える葉】

燃える葉、火柱を上げる樹木、美しい庭園は火の粉に彩られ、わたくしの愛した邸宅が崩れ落ちる。
都は荒れ果て、人々は逃げ惑い、僧兵が大路を駆けずり回る。刀を振る彼らは、老婆を切り捨て、幼子を刺し、屍を踏みつけながら御所へと向かう。

のちのちの歴史よ、語るがいい。
いくら平家が悪しく描かれようと、いくら木曽が源氏が持て囃されようと、小さな真実はここにある。大きな歴史の前に、わたくしの真の歴史はここにある。

わたくしは平家の女ではない。けれどわたくしの夫はかの棟梁となるべきお方のお側に仕え、その強さと誠実さを誰よりも知っているのです。
だからこそわたくしはこの歴史を伝えたい。

小さな歴史を、決して忘れてほしくはない…と。

10/5/2025, 10:46:49 AM

【moonlight】

moonlight、月明かり。
君の顔がよく見える。
私の好きな君の顔。

少し釣り上がった目元、きりりとした眉。
筋の通った鼻、弓なりにしなる薄い唇。
細くてさらさらな髪、風に揺れて柔く靡く。

その隣を歩く私が、私は好きだった。

10/4/2025, 12:24:03 PM

【今日だけ許して】

今日だけは許して? …なにを、って?
あなた以外の人を想うこと、愛することを。

今日は私の大切なあの人が産まれた日なの。
だから1年間…365日のうちの1日くらい、
あなた以外の人を想ってもいいでしょう?

だって、あの人のおかげで私は私に確立し、
あなたと出会うことができたのだもの…。

10/4/2025, 1:52:46 AM

【誰か】

私はここにいます。
誰か私を見つけてください。
私はここにいるの…あなたの前に。

私の視線から目を離さないで、
私の涙をないものにしないで、
私の声をしっかりと聞いて、
私の手をすり抜けないで、
私の身体をしっかり抱いて、
私の近くから遠ざからないで、

私はここにいるのです。あなたの側に。
もしも誰かが――たとえばあなたが、
私を見つけてくれないのならば、
私がここに存在したその確かな証明を、
いったい誰がしてくれるのでしょうか。

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