「降りやまない雨」
あの日、突然降りだした雨。
まさか自分の身に降ってこようとは!
この先降り止む日が来るのか?
背中を丸めて下を向いたまま顔を上げられない。
青空を見上げる日は、もう2度と来ないのか?
だが、雨は徐々に小降りとなり、
やがて止み、
重く垂れ込めた雨雲の一部から
光が一筋見えた。
大丈夫、そう思った。
そう簡単にこの身は滅びない。
5月の眩しい程の青空を見上げ、
今日という日を生きている。
雨は忘れた頃に再び降ってくる。
強くなった私は多少濡れようとも動揺しない。
雨が降ってきたら傘をさせばよい。
誰かが傘を差し出してくれる。
雨は降りやまないかもしれない。
その時は、雨が降っていることを忘れればよい。
雨とは長い付き合いだ。
悪いことばかりではない。
雨に気づかされたことも多い。
心落ち着く雨音。
1人静かに聞きながら、
明日も生きていく。
15歳の春、高校の入学式を迎えた私に
憧れの制服に身を包み、希望に道溢れ、不安もありものの期待は大きく、だからこそ今でも鮮明に覚えている。
講堂での式の記憶は曖昧。だが、1年7組の教室のざわざわした雰囲気は、いまでもすぐにタイムスリップできる。
出席番号の順に並んだ席。男子は左手から。女子は右側。私の席は教室のど真ん中!
右側にはtーちゃん。今でもお付き合いしている高校時代の1番の友人。明るい声でよくしゃべる。すぐに仲良くなった。後ろはkちゃん。この子もよくしゃべり、かつ意見を臆することなく言う。頭の良さそうな子ばかりだ。
そして1番気になるのは、私の左側の男子。入学第一日目だというのに、ずっと机につっぷして寝ている。だから顔は見えない。
名前が呼ばれて、各自前に出て、何かを受け取りに行った。やっと級友たちの顔をチェックできる。寝ていた彼もヨロヨロと起きて、その後ろ姿を見送る。そして彼が振り返った。
その瞬間、私は恋に墜ちたのだと思う。
なんと可愛らしい甘いマスク。
彼との出会いの日。
1番戻りたい過去。
ここからやり直せたなら。
でもきっと、また同じなのだろう。
あの頃とちっとも変わらない、私の心根。
担任は数学教師。
毎朝のホームルームで数学のミニテスト。
一問のみ。習いたての因数分解。
私が頑張れたのは1年の1学期まで。
授業のスピードが速くて、
私の理解などお構い無し。
高校生活の期待はすぐに下降線。
得意の英語も乱気流。
あの頃は毎日何を頑張っていたのか?
仲良しはすぐにできた。
男子とも話せる。彼ともチラチラっと話した。
家が近くとわかり、一緒に帰ろう!などと気楽に声をかけてくる。だけど、ついぞ一度もそうはならなかった。