『幼い記憶での赤い月の標本。』
幼い頃のちょっとした記憶…
お母さんと手を繋いで帰った夜の道で、月が赤いことに気付いてさ、幼かった自分は世界終わるの?終末ってやつ??ってな感じで内心アホみたいに焦ってたんだけど、お母さんがちゃんと説明してくれたよ「皆既月食で赤く見えるだけだよ」
幼い自分からしたら何もかもが凄いことだったんだ。
自分はあの赤い月がまた見たくて、お母さんの部屋からこっそり持ち出した小説本。幼い自分には読めないばかりの漢字には目もくれず、赤いクレヨンや赤い折り紙、赤いリボン、お母さんの赤いリップ、…とにかく赤いものを使って、あの赤い月を小説本のぺージに再現しようと描いたり、くっつけたり、塗りたくったりして、遊んでいた。
大学生になった今でも、ページに何個も乱雑な赤い月が作られた小説本を時折思い出す、あっという間に大人になった自分を、幼い自分に重ねると必然的に懐かしさと少しの寂しさが胸に溢れていく、
今晩はそんな出来事を鮮明に思い出せる、
そんな夜だろう。
『いつかの後悔』
愛猫の『リー』が夜明け前に息を引き取った。
老衰では無い、病気だったのかもしれない。怪我だったのかもしれない。
私は最低だった、本当に。
ずっと鳴いていた、いつもよりも大きく、誰かを呼ぶようにずっと…それなのに「様子おかしいね」なんて姉と話して、何もすることが無かった。
なんとなく察していたのにも関わらず、何かを優先しようとした。きっと大丈夫、また次の日には甘えるように頭を強く足に押し付けて転ばせようとしてくるだろう、そんな保証もないことを心に浮かばせて、安心しようとしたんだ。
でも死んでしまった。きっと私のせいだ、何がとは言えない、私のせいだろう。
リーが死んだ時、悲しみと共に安堵が浮かんだ。自分の感情のはずなのに理解できずにいた、私は…どこまでも最低だった。もう諦めていたクセに泣くなんて、最低だよな。
親が引き取った猫、小学生時代から傍にいた猫。
親は本当に無責任に動物を飼っていた。
そして私も命を背負うのが嫌で、諦めた無責任な人間。
リーの体が腐らないように、冬なのにも関わらず冷房をつけて周りにはたくさん保冷剤を置いて、リーの鼻から出ちゃう鼻水のようで血のようなものを日が昇るまで、火葬屋が来るまで拭い続けた。
死後硬直で固まったリーを火葬屋に預けた後、私自身はリーが死んだ事への実感が上手く湧かないまま、自分の部屋は私を責めるように冷たかった。愛してるなんて簡単に言うものじゃない。