レースカーテン越しに
街頭の白い光が畳を照らしていた。
ぐったりとして、ただそれを見つめていた。
#閉ざされた日記
手を横に広げて歩いた。
私の失恋をからかい半分で慰める
友達の声は置き去りになった。
すすきのようなものが揺れていた気がする。
世界は黄金色に包まれてその先に雲が広がっていた。
#この世界は
この部屋から出たら、
この時間が終わったら、
その続きを考えたくなくて、
指先の温もりと甘い言葉に縋り付く。
#夢を見ていたい
君がいるから平気だった。
コートのポッケにふざけて手を入れて
その中で手を握るのが好きだった。
2人共冷え性だから全然温まらなくて
鼻をすすりながら一緒に歩いた。
君と最後の日、改札前で握手をした。
君の鼻は赤くなっていた。
お互いの心は決まっていて、
なのに、君の柔らかくてちょっと冷たい指先から
そんな思い出がこぼれだしてしまったんだ。
#寒さが身に染みて
「色とりどり」は強敵である。
化粧品売り場に行ったときのことだ。
その日は丸腰で前情報を持ち合わせていなかった。
売り場はブランドごとに整列されていた。
ローズ系の口紅は視界に入るだけで数種類、
ブランドを変えれば星の数ほどに感じられた。
アイシャドウパレットは私を誘惑し戸惑わせた。
「可愛い」と手に取った瞬間に
「いや、似合うのか。使いやすいのか?」
「そもそも自分はイエベなの?ブルベなの?」
「この値段はリピ買いできるか??」
の問いが繰り返される。
口コミや似合うパーソナルカラーをすぐにでも調べたいが、今日は一人ではない。
後ろから健気についてくる恋人は、
「ゆっくり見てください」のスタンスだが、
いつ「全部同じ色じゃん」なんて
疲れ果てるか分からない。
一つの情報も取りこぼすまいと
青ざめて目をぎょろぎょろさせながら、
店をぐるりと一周した。
そして様々な色と選択肢に圧倒され、疲弊し負けた。
次こそ準備を整え入店しようと
化粧品売り場を後にしたのだった。
#色とりどり