思わぬ怪我をしてしまった。
へらへら笑う私に
彼は「笑い事じゃない」とそっぽ向いた。
早足に林の中に消えてしまった。
「行かないで」
なんて言えなかった。
ただ、紅葉し始めた葉っぱを彼の服と
見間違えながら追いかけた。
でも、何を言っていいかわからなくて
そのうち小雨を顔に浴びながら歩いていた。
大学生とすれ違った。
心から楽しんでいて羨ましくなった。
車に着いて、彼が待っていて
「やっと追いついた」
と笑ってみた。
「ごめん」て謝ってきた。
怒っても悲しんでもいなかったのに、
感情が溢れてきて全部怪我のせいにした。
#行かないで
あの日からずっとぼーっとしている。
数日前、雲よりも高いところで
今までにない体験をした。
だけど、今は田舎の
自動で開かないドアの電車で
田んぼの中を通学している。
車窓をただただ、ぼーっと見ていた。
向かいの乗客もいぶかしげに窓の外をちらと見た。
#どこまでも続く青い空
始まりはいつも暗雲。
引き返そうか進もうか迷ってしまう。
でも、奇跡を信じたくて足を踏み入れる
どしゃぶりでも雷でも
足をすべらせても
私は息を切らして進む
虹が出る瞬間を待っている
#始まりはいつも
衣替えをし忘れた。
いい天気で油断をした。
涼しい風が余裕げに吹き抜ける。
ささくれ始めた手を擦り合わせた。
#秋晴れ
子供の頃は、だまされやすい奴だった。
ぬいぐるみは大事にしていたら、いつか喋ると思って短冊に願い事までしていたし、
Tシャツのプリントが夜な夜な動き出すと言われたら、毎日ポーズが変化してないかを確認した。
鈴の音が聞こえると言われたら、わくわくしてサンタを待った。
書いてるだけでも恥ずかしい。
でもファンタジーの中に生きていたからこそ、
驚きと感動が多かった。
夜のお風呂の妖怪が心の底から怖かった。
マジックが本当の魔法だと思った。
今じゃ感じられない感情だ。
子供のように戻れたら、
毎日に発見がたくさんあるんだろう。
#子供のように