子供の頃は、だまされやすい奴だった。
ぬいぐるみは大事にしていたら、いつか喋ると思って短冊に願い事までしていたし、
Tシャツのプリントが夜な夜な動き出すと言われたら、毎日ポーズが変化してないかを確認した。
鈴の音が聞こえると言われたら、わくわくしてサンタを待った。
書いてるだけでも恥ずかしい。
でもファンタジーの中に生きていたからこそ、
驚きと感動が多かった。
夜のお風呂の妖怪が心の底から怖かった。
マジックが本当の魔法だと思った。
今じゃ感じられない感情だ。
子供のように戻れたら、
毎日に発見がたくさんあるんだろう。
#子供のように
暗い車内。
後ろから抱きしめられた。
「俺達、将来どうなってるのかな」って。
彼が望んでいるものは分かってた。
彼にずっと惹かれていた。
嬉しかった。
だけど、彼が好きなのは
必死に取り繕ってる自分だと気づいてた。
彼の人生をまるごと飲み込む覚悟が決まらないまま、
痛くて仕方なかった。
「わかんないや」
いつも彼がそうするように、はぐらかした。
トランクの暗さに感謝した。
#涙の理由
そんなつもりはなかった。
ただ、車のドアを閉めただけだ。
でも、彼には私が力を込めたように見えたらしい。
「お、おい」
さっきまで、偉そうにしてたのに
散々、ニヤニヤしながら馬鹿にしてたのに
少し言い返したら、急に弱くなった。
彼も人間なんだと夢から冷めた。
#力を込めて
まるでビデオの巻き戻しみたい
日暮れの曇り空が車窓を過ぎ去っていく
山の稜線を辿っていったら
急速に日常に戻ってしまう
まだしがみついていたくて
途中の田んぼでさえ思い出にしようとした。
#過ぎた日を想う
よくも、くすぐったな!
仕返しをしようとした両手は
見事につかみ返された。
笑いをこらえきれない表情で
横にステップを踏みながら
よくわからないクラシックを
るーるるーと口ずさんでいる。
されるがままで、
仕返しをしようとする。
が、ギリギリをすり抜けられる。
私達の奇妙なダンス。
「楽しいでしょ!」って言われると、
「まぁいいか」と思えてしまう。
#踊りませんか