まるでビデオの巻き戻しみたい
日暮れの曇り空が車窓を過ぎ去っていく
山の稜線を辿っていったら
急速に日常に戻ってしまう
まだしがみついていたくて
途中の田んぼでさえ思い出にしようとした。
#過ぎた日を想う
よくも、くすぐったな!
仕返しをしようとした両手は
見事につかみ返された。
笑いをこらえきれない表情で
横にステップを踏みながら
よくわからないクラシックを
るーるるーと口ずさんでいる。
されるがままで、
仕返しをしようとする。
が、ギリギリをすり抜けられる。
私達の奇妙なダンス。
「楽しいでしょ!」って言われると、
「まぁいいか」と思えてしまう。
#踊りませんか
たとえば、信号ですれ違う人
顔は見かけるけど、ほかは知らない。
友達以上に会ってるのに。
毎日、真逆の方向に向かっている。
まっきいろに染めた髪がプリンになって
ついに黒くなった。
そんな時間が経つくらい、すれ違っている。
私達はよっぽどのことがない限り、すれ違うだけだ。
もし数年後巡り会えたとしても、気づかないんだろう。
#巡り会えたら
ブロッケン現象を知っていますか?
私は山歩きをしているとき出会いました。
私を真似た影は大小に伸び縮みし、
周りは虹で丸く囲まれていました。
「妖怪」なんて言われ方もするけれど、
その姿には手を合わせたくなりました。
霧が晴れてすぐに消えてしまいました。
#奇跡をもういちど
東屋に2人で座った。
彼の言動1つ1つに傷ついていた。
なのに、曖昧な態度をとった。
彼と終わりにしたい気持ちと
彼と始まりたい気持ちで揺れ動いていた。
彼は知らない。
ただ静かだった。
私が今日1日楽しんでいたと思ってるだろう。
熱っぽい頬を風が撫でた。
じっと雲を見ていた。
散々なことを言って立ち去りたい
でも「綺麗だね」って笑いかけたい
草は赤く燃やされて叫びを上げている。
心はただそれを傍観していた。
#たそがれ