ここは、誰にも言っていない私だけの秘密の場所。
大好きなお兄ちゃんにだって内緒だ。
そこは、皆が寝静まった夜だけ行くことができる。
「おやすみなさいお兄ちゃん」
「うん、おやすみ」
そんな間を置かず、隣ですぅすぅと寝息を立てる私の兄。
さて、今晩も探索開始だ。
横向きにごろんと転がる兄の寝巻きをそっと捲る。
ぺろんと出てきた、丸みを帯びた桃のような尻。
自分の指にだらんと唾液を垂らし、指先をどろりと濡らす。
兄の褌を少しズラし、秘密の場所へと指を沈める。
鼻に抜けるような甘やかなお兄ちゃんの声が探索の合図。
今晩はどこまで進めるか。
起きないように細心の注意を払って、少しずつ秘密の場所を暴いていこう。
歌が聴こえる。
誰の、声だ。
キラキラと美しく光る輝きの中に大佐は消えていく。
ラ、ラ、ラ……
「大佐!早く!避難を!」
私の叫びも虚しく、宇宙要塞ごと抉り取ってそれは消滅した。
「時が、視える」
謎の言葉を残して。
必ず貴方を探し出します。
だからその時までどうか、お元気で。
この空の下、あなたがいてくれることがどれだけ嬉しいか。
それはもう二度と会えることが無いと分かっていても。
風に運ばれてきた花の種が春を知らせてくれる。
嗚呼今年もこの季節がやってきたんだね。
じわり、溶けていく僕のからだ。
沢山の愛情込めて作ってくれた白いからだ。
頭のバケツが、カランと落ちる。
夢を、見過ぎたようだ。
甘く揺蕩うような時間はもう終わり。
さて、ここでクエスチョン。
「来月のお支払い額はこちらです」
スマホがギラリと光る。
このアンサーを知るのはまだ少し、先で良い。
「また会おう」「必ずだぞ」
言葉だけでのやり取り。
命を賭しての戦いがこの後に待っている。
それでもこの約束を信じたいと思った。
いつか必ず再会して、また酒を酌み交わしたい。
その時には今日のことを笑い話にでもして、あの時あんな事があったなァなんて。
たとえ、姿かたちが変わってしまっても自分を分かってくれると信じていた。
「化け物!」
お主が記憶を失くしたのは知っていたが、感動の再会がこれでは台無しではないか。
だから文字通りに捕まえた、今度はもう決して離さない。
「……ちゃんちゃんこを着ておれと言うたではないか」
先に約束を違えたのはお主の方だ。
胸の奥、ひりつく痛みから目を背けるように捕らえた男の唇にがぶりと噛み付いた。