お着替えしましょう
ようやっと季節が冬めいてきたのよ
このセーターに腕を通してあげれば冬仕様の完成だ
嗚呼泣いてるの?どうして?
セーターはまだ暑かった?それとも苦手な色だとか?
理由の分からない涙は嫌いなの
今度はあなたの瞳も奪おうかしら
木枯らしがぴゅうと吹き付け、枯葉がひらりと落ちてゆく。
一年の中で一番大好きな季節かもしれない。
耳朶はひんやり冷たく、指先は悴む。
スッキリした空気が寝惚けた頭をしゃんと起こしてくれる。
おはよう世界、おはよう冬。
音のない朝の切り取られた今を気持ちよく味わっていこう。
この関係に名前をつけるとしたら一体何だろうか。
身体だけの関係にしては心の繋がりも十分過ぎるほど感じていて。
でもおいそれとその枠に収まるわけにはいかない。
少なくとも自分はこう思っていた。
「愛しているよ」
嗚呼やめてくれ。心が身体が、勘違いしてしまいそうになる。
とくんと弾む胸のうち。
それでも今はまだこの気持ちに名前をつけるわけにはいかない。
気がついた時には得体の知れない化け物に身体の自由を奪われていた。
化け物は全身に包帯を巻き付け、腐りゆく身体を何とか保っているようだ。
俺は一糸まとわぬ姿にされ、嫌という程蹂躙される。
怖い、逃げ出したい、助けてくれ。
湧き出る嫌悪感、恐怖とは裏腹に心は存外凪いでいるのは何故だろう。
ぽたり、化け物が涙を零す。
本来なら汚らわしいと思っても良いはずなのに自然と俺は化け物の頬にそっと手を触れていた。
「……泣くなよ、」
「うう……」
胸の奥がぎゅっと締め付けられる。何故だ。分からない、何も、思い出せない。
それでも俺はこの化け物の涙をこれ以上見たくは無い。
誰にも見せないよ、あなたが僕から離れて行かない限りは
僕のとっておきの宝物
おいそれと誰かに見せるのは勿体ないからね
僕にしか見せないあなたの顔は他の奴らには絶対に見せたくない
だからどうか僕から離れていかないで
この宝物はあなたと僕を結ぶ唯一無二の約束事