そろそろ放課後って時間が人生からなくなりそう、鬱だ
【放課後】
なかなか当たらなかった窓際の席についにこれた。
日差しも落ち着いてきたこの頃、窓際の席を堪能するには良いタイミングなんじゃないかとワクワクしていた時期もあったな、と思い出す。
寒い。
日差しも無いし、窓を開けても暑さが落ち着き虫が入ってこないのはいいものの、入ってくる風が思いの外寒い。こんなでもあついあついと、代謝が良いやつもいるし、風があるのにエアコンつけるのもちょっと、ということで、自分の一存で閉める訳にはいかないのだ。集団行動、民主主義の闇だなんて、辛くても合わせなければならなくなったこのポジションになった途端に思う。
強風では無いし、もう風のことはいい。
このカーテンだ。こいつが風で広がり、片手でやんわりと払うだけじゃ、はらえない。生き物のように顔面を撫でつけて視界を邪魔してくる。ここが家なら思い切りぶっ叩いて、縛り上げていた。
別にここでも、さっと結んじゃえばいいじゃん、という話だが、タイミングが掴めない。窓際の席に関しては初心者マークの生徒なので。他の生徒なら、さっと立って授業中でも先生も気にせず、結ぶし、周りの席も何も言わないけど、あ、やってくれた、と一瞬だけ思いおわる。
でもいざ自分がそれをやるとなると、いまいち踏み出せない。このカーテンの暴れよう、被害があるのは自分だけだが、周りも風の具合によってはいつ自分まで巻き込まれるのかと、ちょっと気になっているのはちりちり感じている。いつやんのかな、気になんないの、はやくやってくんないかな、と思われてるかもしれない。
でもこの暴れカーテンをすぐに押さえきれずに、奮闘する無様を、無視されているようで見られていることになったら、とか考えては、もうはやく休み時間こい、それか風なくなれ、とひたすら念じていた。
【カーテン】
ぽつぽつと始め、そのうちに今までにないほどすらすらと彼女は長く話し出した。今日は珍しく、俺が黙って聞いているからかもしれない。
「だから、君がいなくなると思ったら、」
そこまで話したとき、いきなりヒュッと息が止まったかと思えば、突然その瞳がゆら、と輪郭がぼやけて、ひとつの水になって、ボロりと頬を伝わずに膝に重く落ちた。
一瞬もしないうちに変わった空気に戸惑ってしまう。さっきまで憑き物が落ちたように穏やかに、でもいつもと同じ調子でこっちを仕方ない奴だと見るようにすらすら話していたじゃないか。こうやって泣くときってだんだん声が絞られたり、涙ぐんできたりするもんじゃないのか。目薬使ったってもっとそれらしくなるだろ。
そこから糸が切れたようにただ、泣いている。泣き出して言葉のかわりにひたすら、息苦しそうに、不安定なリズムで、しゃっくりのような呼吸と、鼻をすする音がしている。怒っても泣いても意味が無いだろう、面倒なやつ、話を聞く気も失せると思われるだけだと、どんなときもその対して変わらない表情で、理性的な言葉を、誰が聞いたって言い返せないくらい、その通りですと言うしかない言葉を紡いできた口からは、うう、と意味の無い鳴き声が吐き出されている。
彼女はなんで、俺みたいに鈍くて、単純な奴と組んでくれたのだろうと聞かれてしまうと、未だに少し疑問だ。
俺だって最初、なんで? って感じはあったけど、噂より怖くないし、真面目で。出来ない人を馬鹿にもしないが、能天気にできなくてもいいじゃん、とも言わない。聞かれたらただわかりやすく答えて、わからなければ、わかるようにその人に合わせて例え話をする。特別明るくもないし、現実を突きつけるツッコミもしてくるけど、いいやつだと思う。
正直、彼女はなんで泣いているんだろうと今思っている。俺が居なくても対策してたはずだし、心配してくれたのだろうか。少し違う気がする。不安になったのか、なぜなのか、今本人も気づいてない気持ちを、言葉より先にその涙が押し出している。
【涙の理由】
ココロオドルで描かせたら心臓が破裂した絵をお出しされた。
【ココロオドル】
漫画で言う、2巻目みたいな、一波乱終わったあとの束の間の休息のターンがくる話がすきだ。
【束の間の休息】