明良

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8/23/2024, 12:15:05 PM

海にくれば何かすっきりするとでも思ったか。
海が近いところに住んでいると、当たり前っちゃ当たり前だが、海に夢が無くなる。
砂は木屑や硝子、プラゴミに欠けた貝殻だらげで裸足で歩くとあまり心地よくは無い。色も大して変わらない公園の砂の方がまだ綺麗だ。
海も空が真っ青なら多少は綺麗に見えるだろうが、大体灰色にみえる。足をつけると潮のせいか痒くなるし、海で足をすすいでもスッキリせずぺったりと汚れた足を玄関のホースですすぐまで我慢することになる。
潮風は心地よく吹いてのんびりとカモメが飛ぶ空の下でで昼食なんて私にはフィクションで、強風や飯を狙うとんびに警戒して、昼食の入った紙袋を持つときはしっかり抱えてさっさと屋内に入るのが常だ。

この島でデートに来たカップルは別れるジンクス?この島の女神が嫉妬して別れさせるという迷信だな。
この島がデートに向いていない、カップルがこの島で楽しませてもらおうという気しかないからじゃないか?駅からこの島まで遠い。手段は歩きしかないし、島の中も急な階段や獣道ばかりで自転車を使う隙もない。飯が美味い店はあれど、立ち食い前提、「映える」スイーツは他でも食べられそうな風貌のくせにこの島の名前を付けてやけに高い。潮風で髪はぐちゃぐちゃだ。
のどかな雰囲気につられた観光客が地元民よりいて、二人きりになれそうな場所は有料だ。そこそこするぞ。
まあ要するに、遊園地と同様、楽しむやる気がないとイライラしやすいところなんだ。女神様のせいにするな。

今晩は天気が荒れるな。海が近いと、台風で学校が、仕事がどころの話じゃないんだ。島が閉鎖か云々、今日を乗り切れるかの話だ。

わかったらこんなところで耽っていないで、電車が出てるうちに帰りな。事情も聞かず、知らない子を泊めてくれる爺さんやお姉さんはいないぞ。そんなのに会ったら大体不味いぞ。それはコンクリートジャングルでも同じだろう?

あーあ、私もあんたが言う海のような場所が欲しいよ。

【海へ】

8/22/2024, 1:59:22 PM

好きの裏返しなんて言われてもさ、わかんないのよ。
お前の言葉の裏をわざわざ読もうとするほど、仲良くもなってないんだから。
ただ傷ついて、お前のことは何とも思わない人から嫌いな人になりました。
何とも思ってなかったから、ちょっと優しくするだけで好きになったかもしれないのにね。
次の子にはそうしな。

【裏返し】

8/21/2024, 7:26:11 PM

大人になっても、鳥になってみたいと思っている。
幼いときにみた、鳥のように羽を大きくはためかせ、高い空をまっすぐに勢いよくすすむ夢を覚えている。
しかし今は、鳥になれたら空を飛びたいというより、鳥になれたら高いところで落ちることに怯えることなく人の頭を見下ろしたりしたいと思い浮かんで、自分は鳥にならない方が良い気がした。

【鳥のように】

8/20/2024, 3:16:27 PM

夏休み終盤、残り少ない休みの日に委員会の当番の仕事をしに学校行くと、そこには先輩の姿もあった。近くで用事を済ませたついでに様子を見に来てくれたようだ。
久しぶりにみる、相変わらず涼し気な顔に、珍しく着崩した制服の組み合わせに、懐かしさと非日常性を覚える。
何か話を聞きたい気持ちはあれど、これといって言葉が浮かばず、お疲れ様ですとだけ声に出す。私の様子を察したのか、ゆったりと先輩は、きちんと当番の仕事をしているようで安心した、と先生のようなことを言ってきたあとは、宿題は済ませているのか、どこか遠出はしたのかと、これまた先生でも聞いてくることはあまりないそれらしい質問を時々投げかけてくる。
それに答え、私も先輩は、と投げ返すと先輩もこの夏の出来事をぽつぽつと話してくる。
お互い人見知りというわけでもないが、元々言葉数が多い人間でもなかったので一人でいるときより静かな時間にも感じられたが、体温は高かったように思う。
仕事をいつもより早く済ませ、帰路に着く。夏雲の流れが速い。
まだまだ太陽はギラギラしてるし、流れる汗はひかないのに、暦だけは夏の終わりを迎えようとしていた。

夏休みが明けた。
後期は先輩方からの引き継ぎが終わり次第、特に問題がなければ、先輩方は引退。私たちのみで活動が行うようになる。
所属人数が少ないためかトラブルが見舞われがちのこの委員会だが、引き継ぎはすんなりと終わった。自分のような後輩を手懐けながら、何だかんだとこの委員会を回してきた先輩だ。夏休みの間に他の先輩方と問題を片付けて後は私たちに任せられるように準備していたらしかった。
先輩は時々様子を見に来てくれるが、さよならの準備は確かに進められている。まだ夏用の制服を衣替えをするには残暑が厳しかった。

門出の数日前に会った先輩は、元気でね、もうあまり心配はしてないけど無茶しないこと、としか言わなかった。いつもみたく、じゃあまた、とは言わなかった。
さようならを言ったらこれきりに思えてくる。かといって、また会いましょうと言ったら、そうだね、と返されたきりになるような気もした。
お疲れ様でした、といつも通りの別れの言葉しか出なかった。

【さよならを言う前に】

8/19/2024, 11:13:23 AM

「……なーんにも見えん」
めったに寄らなくなった公園のベンチにどかっと座り込みながら、空を見上げて小さく独り言ちる。

昔は、人見知りで自由時間は絵を描くか空を眺めて過ごしていたことを思い出した。
そのうち自由時間は焦るように誰かに話しかけて一人にならないように、あの頃思う普通から外れないように必死に動き出すようになっていた。
そうして、将来、損得、生産性云々、その言葉の意味も重要さも未だによくはわからないものが確かに自分に重くのしかかるように感じて、それらを追いかけて同年代と情報の、横と下を見続けている。

暇つぶしの道具を何ももたず、そもそも暇ができただけのちいさなわたしは、空を見て雲の流れるはやさとか、あの雲はお父さんが飲むビール缶に載っているあの動物に似てるだとか、ぼけっと上を見上げていた。

やりたいことも、やらなければならないことも何の選択肢も私のなかには存在していなかった。
今じゃ嫌でも選択しが浮かび、暇でありたいのに暇していたことを悔やみ、自責する。

まだ明るかった空が暗くなり、街灯の存在が目につき始める。赤紫色に小さな光が散っている。そのなかで動く主張が激しい大きな光は、UFOではなく飛行機であることはもう知っている。
空の色と雲を見て、もう少し雲は太陽を隠せとか、明日は雨が降りそうなのは勘弁してくれだとか、自分の都合に合わせたことしか浮かばない。
目に映る空には何の模様も見えず、目を閉じてぬるい風をただ聞いていた。

【空模様】

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