実家の裏にある山は、お天気雨がよく降る。
必ず傘を持って遊びにいった。
広げてくるくる回して歩く。
太陽に照らされた雨粒、すごく綺麗。
この時間が好きだった。
気付くと隣に知らない子がいて、傘にいれてあげた。
2人で静かに眺める景色は、幻想的で美しい。
「ありがとう」
声が聞こえたと思ったら、その子はいなくなっていた。
そういえば、昔、祖母が言っていたのを思い出した。
「あの山にはねぇ、神様がいるんだよ」
あの子はたぶん神様だった。
目を覚ます。ベッドの上だった。
『うぅ…、いま何時…?』
やべっ、寝過ごした?! 一瞬、覚醒して時計を見る。5時くらいだ。窓から夕焼けが見える。
…???
…寝起きで頭が回らない。ぼぉーっとする。
えっと…今日何曜日だっけ…?仕事は…?
確か日曜だったような……もしかして夕方まで寝て、た…?
…? 何かがおかしい…なぜだか眠くて眠くてたまらない…
起きていられない……
「…、やっぱ、むり…だ……」
寝た。
―――――――ドゴンッ!!!
「っ、いってぇ~~っ!!……はっ!!」
ベッドの下だった。
(夢の中で寝る、夢。)
夏の香りにつられて食べてしまった。
甘くて冷たい、魔法みたいなお菓子。
食べているときの幸福感!
なくなったときの喪失感…
小さな涼しさが残る。
氷菓。
そうだ、今日をアイスの日にしよう。
自分だけの、特別な。
もう来年の夏が楽しみだ。
初夏。
新しい部屋のベランダで、アイスクリームを食べた。
たったそれだけのことなのに、幸せだなぁって、目に映る全てがキラキラになったのを覚えてる。
生ぬるい風、窓の向こうから夏の気配…
誘われるように外へ出る。
あぁ、今年も夏がやって来た。
冷たいお菓子が食べたくなった。
あなたが紡いだ物語を、
誰かが、ほんの少しでも、好きだと思ってくれたのなら…
その人の心の中には、
小さな本の種が、
芽吹き始めたってことじゃないかな。