10/13/2023, 12:33:08 AM
「では、これより会議を始めます」
重苦しい台詞とは裏腹に、周囲から聞こえる雑音はいつにも増して騒がしい。なぜなら、ここは駅近くにあるファミレスだからだ。
「議長」
「はい中沢くん」
「ここのアイスは仕入れているメーカーが他社と違うと聞きました。ソフトクリームバーも付けることを提案します」
中沢と胸元に刺繍の入ったジャージの少女が手元のメニューを揺らしながら前のめりに提案した案に、同じくメニューを持ち真剣に聞いていた他二人が頷く。
「では本日はいつものピザにソフトクリームバーということで」
先ほど議長と呼ばれた一つ結きの少女が店員呼び出しボタンを押し、ふうと息をつく。途端に張り詰めていた空気が緩み、席を囲む四人からも苦笑やあくびが漏れた。
「うちら授業中より真剣じゃん」
「マジにならなくてどうするのよ、放課後だよ?」
「放課後ぐらいちゃんとしないとね」
「森センに怒られそー」
10/12/2023, 6:57:57 AM
今日は機嫌がいいな。窓際で揺れるカーテンを見てそう思った。
眠気のピークを迎える午後一発目の授業は、寝落ち防止にカーテンを眺めるようにしている。はじめはただの暇つぶしだったが、風の纏い方や日差しの好き通り方が日々違うことに気付いてからは眺める行為そのものが楽しくなってきたのだ。例えるなら猫の尻尾、電話口の母の声、近所の定食屋の味噌汁の具のような気まぐれっぷりを含んだ表現がそこにある。
首の後ろを容赦なく焼き付けていた苛烈さがなりをひそめた秋口の陽光を、柔らかくその身に纏ったカーテンは今週のベストオブカーテンかもしれない。