太陽が人類を殺しにかかっている
意地張ってる場合じゃない
日傘はさしたほうがいい
◼️日差し
わからない
私をいつも悩ます
どうしたらこのシーンの意図を
最大限に伝えられるのだろう
私はこれから真っ白なキャンバスに
自分の思考を余さず乗せきらないといけない
フレーミング、アングル、陰影、色彩、構図
その全てが最高の条件で一致してほしい
苦しい
傑作は頭の中にあるのに
吐き出した瞬間に駄作に変わる
フレームの中に収まった一枚の絵
覗き込むと浮かび上がるワタシの情熱と怨念と祈り
◼️窓越しに見えるのは
死が二人を隔てても
次に生まれてくる場所が
どんなに遠く離れていても
大丈夫
ちゃんと繋がってる
必ず出会える
この小指の先に伸びる糸を
見ることはできないけれど
ある日唐突に、何の前触れもなく
あぁ、やっぱりここに繋がっていたんだね、と
気付く日が来るのでしょう
その日まで短いお別れ
運命の人
◼️赤い糸
夏の絵を描いて。
朝顔、向日葵、百日紅
縁側の風鈴、灼ける瓦屋根の家々
庭に出したビニールプール
白いワンピース、麦わら帽子、子供サンダル
水飛沫、笑う君
なんでもいいよ。
とにかく彩度を右に右に、一番右に。
背景にはいつも
真っ青な空と
天に向かって聳え立つ巨大な白雲
チカチカする夏の色彩を抱いても
調和してくれるから安心して。
◼️入道雲
入道雲を背にして
笑いながらこちらを振り返る君の
笑顔をずっと探してる
夏の初めに予定を立てようと
懐かしい二つ折りの予定表を
弟から奪ったのだと
悪びれもなく広げる君
僕にはそのコピー
その夏ふたりは同じ時間を共有するつもりだった
花火大会の浴衣の匂いにソワソワしたり
突然の雨に呆然としたり
間に合わなかったバスを大声で追いかけたり
川沿いの蝉の煩い木陰で無為に時間を潰したり
チョココーヒー味のアイスを分け合ったり
そのすべてのシーンに君はいないけど
どこまでも続きそうな農道の蜃気楼の先に
やっぱり僕は
君の幻影を見る
◼️夏