誰にも言えない秘密。
化粧箱の中に隠しておく。
時々そっと取り出しては、秘密の薫りをかぐ。
すみれの花の様な、茉莉花の花びらの様なその薫り。
深く深く吸い込んで。
またそっと化粧箱の中にしまい込む。

そんな秘密が今日、またひとつ増えてしまった。

ねこと暮らすこの狭い部屋。
仕事から帰ってきて思うのは、
私たちは救われたんだ、という事。
色々な運命のいたずらでこの部屋に住んでいる。

漂流する離れ小島の様な、この狭い部屋。

失った恋と書いて、失恋。
失くしたと思って出てきた恋は？
本当にその人の記憶を失うまで失恋じゃないのかも？
失敗した恋の略？
失踪した恋の略？

いい歳をして、私は恋については何も知らない。

貴方も私も正直で嘘が下手。
だから正面からぶつかり合う事しか出来なかった。
ちょっとぐらいずるい方が優しくなれたのかもしれない。

またあえたなら。
もう少しソフトに貴方と向き合いたい。

梅雨空に思う。
貴方の心持ち。
ずっとぐずぐずして、晴れない心。
いつまでも続く雨。

それでも。
高い高い青空が広がる夏を、待っている。