夕焼け小焼けのチャイムが遠くで鳴り止む。
古びた教会の屋根を薄明かりが包み込み、空と街の境界線が淡いグラデーションに溶けて、思わず立ち止まり、その景色に見入っていた。
街灯がひとつ、またひとつと温かいオレンジ色の灯りをともし始め、夜の気配が優しく背中を押す夕暮れ時。ふと隣を見ると、その夕映えの中で、最後の太陽が君の横顔を琥珀色に縁取っていた。
まるで琥珀色に溶けて、君がどこか遠くへ行ってしまうみたいだった。
いつまでもこのままでいたいのに…。沈む夕日に照らされ、オレンジ色に染まる君と僕は、長い影を重ねて、言葉を失くした。夕闇が君の輪郭を少しずつ淡くしていくのを見つめながら。
街が孤独な色に包まれる頃、僕はあなたを思い出す。
僕は、心に決めていた。
今日こそは、言おう、と。
早く着く予定だったのだが、 途中で目眩を覚え…
時折座っては呼吸を整え、また歩き出す。
1時間ほど待たせてしまっただろうか、
約束の場所にはもう、君がいた。
「待たせちゃって…、ごめん。」
「え、ううん。」
いつもなら、おどけて僕を笑わせてくれるのに。
今日の君はなんだかひどく遠くに見えた。
「ちょっと忘れ物しちゃっ…て…さ、…」それだけ言うのが精一杯で、僕は肩で息をしながら、崩れそうになる膝を傍らの柵に手をついて支えた。
桜の木の合間から見える淀んだ空から、桜雨が…。
「……傘、入る?」
掠れた声で尋ねると、彼女はただ俯いていた。僕は無理やり笑みを作って傘を広げ、二人の空間を淀んだ雨から切り離した。
傘に当たる雨粒の音が、僕らの言葉を奪っていく。
桜の花びらが濡れたアスファルトに張り付いている、冷たい雨の中で。
傘の中を覗き込み、君の目を見つめると、君は慌てて視線を落とした。
頬から、一筋の光…
その雫が頬を伝って消える。
「僕の心の距離、とっくに気づいていたんだね。」
少し震える声で言うと、君は黙って頷き、そっと手を握る。冷たい。でも、温かい。
「桜が散るのと同じだよ。僕は、この雨と一緒に消えるだけ。」
囁いた言葉は、桜雨に溶けていく。
そして君は言葉なく歩き出す、 渡した傘も振り切って...
これで良かったんだ。最後まで一緒にいたら、君を悲しませ過ぎてしまうから…。
僕は、蒼白く羸痩した指で傘を拾い、
桜が舞い散るトンネルで、君の人影が霧に消えるまで、ただ佇んでいた。
散り急ぐ花弁に、死神の影を纏ったような寂しげな影を落として……
もう一度だけでいい。
君と並んで話したい。
星空の下で...
ねえ、覚えてる?
僕が仕事で遅くなった時、
迎えに来てくれて。
空を見上げると、たくさんの星...
流れ星が幾つも流れて、2人で驚いたね。
あの時、なんのお願いしたのか
しつこく聞いても、
君は教えてくれなかった。
ねえ、今度聞いたら教えてくれる?
もう一度だけでいい。
君と並んで話したい。
星になった君と......
「1つだけ願いが叶うなら、
あの頃に戻りたい。」
人はよくそう言うけど、
また同じ運命を辿るのなら
二度と戻りたくはない。
「幸せに」というお題で、2つのシチュエーションが浮かんだので両方書いてみました。
1.
お幸せに...
そう言うのが精一杯だった
それ以上は
喉の辺りが苦しくて...
頬をつたう涙に
夜の風だけは優しかった...
──────────────
2.
幸せになれよ!
笑ってそう言ってくれたけど
昨夜酔って泣いてたね、
お父さん。...