遠い日の記憶
「ふふ、ごめん、かわいいなって」
君が笑う。
「私も好き」
真っ赤な顔も。
「つらかったよね」
泣き顔も。
「ホント信じらんない!」
怒った顔も。
「あいしてる」
とろける顔も。
「おばあちゃんになっても、一緒にいてね」
全て鮮明に覚えている。何一つ薄れずに。
「なあに、人のことジロジロ見てにやにやして」
「歳をとったなと思って」
「まあ失礼ね。お互い様でしょ」
「そうだな。ずっと一緒に生きてきた」
「? そうね、色々あったけど」
空を見上げて心に浮かんだこと
「腹へった」
「お前……幸せそうだな」
「え? 腹へってんのって不幸じゃね?」
「それはあれだよ、空腹は最高のスパイスって言うだろ」
「なるほど。ということは、腹へってんのも美味い飯を食うためだから幸せのうちってことだな!」
「いやーホント幸せな頭」
「頭? いや、幸せは心で感じるもんだと思うぞ」
「はははそうだな」
「よし、じゃあ十分腹へったし、食材獲るか!」
「だな。無人島に流れ着いて3日。たまには腹一杯食いたい」
終わりにしよう
「はぁ、はぁ、まだ、終わってねぇ、よ!」
「くっ……そんなに嫌か!?」
「嫌だね! ぜってぇお断、」
「……」
「何でんな顔すんだよッ」
「そりゃ凹むだろ。絶対お断りとか言われたら」
「いや、違、そういうことじゃなくてだな」
「じゃあどういうことだよ」
「だからその……負けたくねーっていうか、つまりお前が勝ったらじゃなくて、アタシが勝って付き合いたいっつーか」
「!……あーもう俺の負けだ。つーか最初から負けてた」
手を取り合って
「大丈夫?」
顔を上げると、緊張した顔があった。
「平気」
ばら撒かれた筆記用具を拾う。嘘じゃなかったけど、顔を見られたくなかった。ボールペンが差し出された。
「そっちこそ、関わらないほうがいいんじゃないの」
一瞬怯んだようだけど、手は下ろされなかった。
汚れた筆箱とノートを抱えたまま、途方に暮れる。
「私さ、声大きいんだよね」
「は?」
「だから、何とかなるって」
ボールペンを筆箱の隙間に突っ込んで、貴方は笑った。
優越感、劣等感
「うわ、今回めっちゃ点数いい!」
「え……そうなんだ、おめでと」
「へっへーん、勉強したからな〜。そっちは?」
「あ、うん、だいぶ下がっちゃって」
「マジか〜ドンマイ!」
(明るくて性格も良くて。せめて勉強くらいできなきゃ友達でいられないのに)
(よっしゃ〜〜〜! これでコイツの親友の座は俺のモンだろ! レベルが違うとか言わせねぇ!)
「……一応聞くけど、お前ら何点だったん?」
「83点」「69点!」
「「「……」」」