柳絮

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7/12/2023, 2:20:18 PM

これまでずっと


「ありがとう」
その言葉で目の前が真っ暗になった。
僕はどこで失敗してしまったんだろう。誕生日に行ったレストランが気に入らなかった? それともプレゼントの方? 喧嘩もしたことがなかったけど、それが逆にきつかったとか?
「――っと、ちゃんと聞いてた?」
「う、うん?」
ああダメだ。ちゃんと受け止めなくちゃ。泣きそうだけど。
「というわけだから、これからもずっとよろしく」
「……へ?」
「だーかーら! 結婚しよってば!」

7/12/2023, 2:15:50 AM

1件のLINE


「あれ、LINE通知来てるよ」
「あーうん」
「え、見ない系? 俺は赤いのついてると気になっちゃうタチなんだけど」
「私も普段はそうなんだけど」
「……なんか嫌なLINE?」
「嫌なわけじゃないけど、うーん、ほら」
「あ、既読つけちゃうんだ。わあ」
「めっっっっっっっちゃ長文なんだよねぇ」
「すごい、スクロールしてもずっと続いてる」
「いろんな話1回で送ってくるし。読むのも面倒で放置してた」
「うん、これは仕方ない」

7/11/2023, 4:30:10 AM

目が覚めると


知らない天井があった。……なんていうこともなく。
起き上がってみても、昨日の夜と変わらない自室。
外はもう陽が高くなっていた。リビングは無人。家族はそれぞれ出かけたらしい。
ふらふら洗面所に向かい、顔を洗って、頭を上げると知らない人がいた。
「うぎゃっ!?」
顔を顰めて変な悲鳴をあげたそいつは、じっとこちらを睨んでくる。鏡越しに……鏡?
さっと血の気が引いた。鏡の中にはそいつしか映っていなかった。つまり。

7/10/2023, 5:47:51 AM

私の当たり前


「アイスは絶対常備! 最低3種類」
「そんなに?」
「卵焼きは甘め」
「うんうん」
「朝食はご飯」
「そっか。俺はシリアルが多いな」
「夕飯は2日連続同じメニューはなし」
「えっカレーも?」
「カレーは例外」
「あはは」

「当たり前って、結構違うなぁ」
「だね。これからお互い擦り合わせていかなきゃね」
「うん。2人の当たり前を作っていこう」
「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

7/8/2023, 1:16:51 PM

街の明かり


夏の夜はなかなかやってこない。
夜更かしする子どもたちや、寝苦しさで晩酌する大人、夜遊びする若者。煌々と灯る明かりだけでなく、一瞬で散りゆく花火の閃光も、夜を明るく照らす。
それでも、日付が変わってしばらくすると街は落ち着き始める。
家々から明かりが消えていくのを高台から眺める。
24時間営業を辞めたコンビニの電灯が消えると、夜明けまでのわずかな時間、街は寝静まった。
代わって、ポツポツと星が騒めき出した。

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