ジャンケン、ジャンケン、ジャンケンポイ。
ウンコを踏んだわけでもないのに、蜘蛛の子散らすように皆が離れていく。
自分の運のなさを呪い追いかけるが、誰も鬼を代わってくれそうにない。
辺りを見回すと、一番小柄なユズキが目についた。
目があった途端、奇声を上げながら一目散に逃げ出す。
逃げ場のないジャングルジムへ追い込んだつもりだったのに、野ウサギが穴ぐらへ逃げ込むようにスルリと潜り込んで行く。
小賢しいまねにイラつき頭に血がのぼる。
ふいに厭な匂いが鼻につき、ジャングルジムに手をかけるのに躊躇した。
ペンキの匂い、それとも鉄の錆びた匂い?
指先で少し触ってみるが、ベトつかないし、ペンキが着くこともない。
気の迷いと振り切り、遅れを取り戻すように勢いよく潜り、四つん這いで突き進んだ。
ユズキは悪戦苦闘する僕をあざ笑うように、今度は上へ上へと登りだす。
目で追うように見上げると、ゴーンとすごい音がして、ジャングルジム全体に震えが走る。
ユズキのてっぺんから嘲り見下ろす様に、益々頭が熱くなった。
やっと頂上にたどり着くと、ユズキはそれを見届けたのが合図とばかりにヒラリと飛び降りた。
追いつめたつもりが、またしてもかわされ、行場のない怒りでどうにかなりそうだ。
怒りで頭がクラクラしていると、不意にヌルリと足元がすべった。
バランスを崩したまま足元へ引っ張られるようにひきづりこまれていく。
体中が熱くて自分の身体なのにピクリとも動かないのがもどかしい。
そうか、さっきのは血の臭いか。
身動きの取れない僕を痩せ細って骨だけのジャングルジムがゆっくり捕食するんだ。
ジャングルジム
電子音のようにいつまでも鳴り響く耳鳴り。
これは耳鳴りなのか。
自分の中だけしか聞こえないのか。
もしかしたら外から聞こえて来るのではないか。
同意を求めるべく周りを見渡しても、誰もいるはずもない。
しかたなしに目をつむり、安静にしてみる。
つけっぱなしのテレビからボソボソと話し声が聞こえてくる。
そろそろ壊れるのかもしれないと不穏煽るPCファン。
不意にがんばりだす冷蔵庫。
虫の音もいつの間にか秋の曲。
眠く、眠たく、まどろみ落ち沈む。
夜中に目覚めトイレに立つと暗闇に明滅する赤い光。
金庫の電子錠が電池切れますよ、と控えめに促す。
どうやら電池を新しくすれば耳鳴りに悩まされることはなさそうだ。
声が聞こえる
昨日も今日も明日も日曜日。
そんな夢のような日々、夏休み。
永遠に続くような万能感がいつの間にか霧散して、とうとう月曜日がやってきた。
どうもこうもしようがないので、仕方なしにうんざり気分のまま学校へ向かい歩き始めた。
久しぶりに教室に入ると、普段つるまない友達との再会は懐かしさがこみ上げて来て思いの外テンションが上がる。
クラスのみんなが再会ムードで賑やかにそていると、カラカラと教室のドアが開く音がした。
ヤバい、先生が来た。
ミュートボタン押したかのように一瞬で静まり返り、上目遣いの犬のように先生の動向を伺う。
先生と一緒に見知らぬ女の子がいた。
教室がすぐにまたザワつき始める。
転校生だ。
しかもメチャかわ。
楽しい二学期が始まる予感にワクワクが止まらない!
秋恋
その瞬間は心に響き、大事にしたいと思う。
でも常に走り続ける日常に乗っていると、車窓から見える景色はどんどん流れてゆく。
そして記憶の書類を無造作にかさ重ね置き、しだいに埋没する。
のんびりお風呂にでもつかりながら、今日を振り返ろう。
心の動きを日記に記そう。
ヒマ潰しに読み返そう。
今からでも自分の人生を大事にしたい。
大事にしたい
人生を振り返ってみたけど、夜景の思い出がないぞう。
東京ミレナリオはエレクトリックパレードみたいなモンで夜景って感じじゃないし、
お台場で観覧車乗ったはずだけど、夜景の記憶はないなぁ。
夜景、夜景とつぶやいて、出てきたのはマッキーのオクトーバーだった。
秘密基地が山の上にあって、そこで仲間内と合流して夜景を見るみたいな曲だったと思う。
彼女も連れて行ってやれよ。
夜景