ジャンケン、ジャンケン、ジャンケンポイ。
ウンコを踏んだわけでもないのに、蜘蛛の子散らすように皆が離れていく。
自分の運のなさを呪い追いかけるが、誰も鬼を代わってくれそうにない。
辺りを見回すと、一番小柄なユズキが目についた。
目があった途端、奇声を上げながら一目散に逃げ出す。
逃げ場のないジャングルジムへ追い込んだつもりだったのに、野ウサギが穴ぐらへ逃げ込むようにスルリと潜り込んで行く。
小賢しいまねにイラつき頭に血がのぼる。
ふいに厭な匂いが鼻につき、ジャングルジムに手をかけるのに躊躇した。
ペンキの匂い、それとも鉄の錆びた匂い?
指先で少し触ってみるが、ベトつかないし、ペンキが着くこともない。
気の迷いと振り切り、遅れを取り戻すように勢いよく潜り、四つん這いで突き進んだ。
ユズキは悪戦苦闘する僕をあざ笑うように、今度は上へ上へと登りだす。
目で追うように見上げると、ゴーンとすごい音がして、ジャングルジム全体に震えが走る。
ユズキのてっぺんから嘲り見下ろす様に、益々頭が熱くなった。
やっと頂上にたどり着くと、ユズキはそれを見届けたのが合図とばかりにヒラリと飛び降りた。
追いつめたつもりが、またしてもかわされ、行場のない怒りでどうにかなりそうだ。
怒りで頭がクラクラしていると、不意にヌルリと足元がすべった。
バランスを崩したまま足元へ引っ張られるようにひきづりこまれていく。
体中が熱くて自分の身体なのにピクリとも動かないのがもどかしい。
そうか、さっきのは血の臭いか。
身動きの取れない僕を痩せ細って骨だけのジャングルジムがゆっくり捕食するんだ。
ジャングルジム
9/23/2023, 6:12:43 PM