悲しみの底に横たわっていると、真っ暗な空に一筋の光が差し込んだ。あまりのまぶしさに手をかざしながら見上げると、一人の女性が目の前に舞い降りた。
一目で分かった。その女性が女神だと。柔らかな眼差しで私を見つめながら、私の手を取りまるで鈴のような声でこう言った。
「戦車じゃなくて、星になりなさい。」
そして、握っていた手を離し私の目を閉じた。
目を開くと、私は公園のベンチに座っていた。そのベンチは公園の中にある小高い丘に位置していて、海を見渡すことができる。そうか、散歩の途中で少し休憩していたんだった。立ち上がり軽く伸びをして、頬を軽く叩いた。
あの日から、険しい山や谷を乗り越え、暗闇の中を突き進んだ。悲しみや苦しみを経験して、ようやく希望の光が見えた時に、女神が教えてくれたことがようやく理解できた。
自分の願いを叶えたいのなら。私の願いを阻む相手を恨んだり負かそうとしたりするのではなくて、私の幸せをただ願えばいいのだと。そうして穏やかな気持ちで過ごしていれば、神様が私の願いを叶えてくれるのだ。
誰かのためになるのなら、声を大にして言いたい。
かなわない恋愛に心を費やすのはやめた方がいいよって。
愛は与えるものでもあるけれど、受け取るものでもあるんだよ。
だから、まずは自分を大切にして愛してあげてほしい。それから、周りに愛の輪を広げてあげるの。そして、あなたに愛の輪を広げてくれる人がいたら、その愛をためらわずに受け取ろう。
そうやって広がっていくのが本当の愛。
一方的に与えるているだけで、あなた自身の心が疲弊するのなら。それは愛じゃなくて欲。
それでもいいって言う人もいるけどさ。結局自分を満たしていないから、誰も幸せにならないの。昔の私がそうだった。
自分を心から愛していたら、その愛に引き寄せられる人が現れるよ。そして、その人からの愛を受け取って。
愛こそすべてだから。
彼女に初めて会った日を今でも覚えてる。
大学院に入学して、初めての授業の日。誰一人知り合いのいない私は緊張しながら教室に入った。二人掛けの机が並んでいて、すでに半分ぐらいが埋まっている。
後方の誰も座っていない席にそーっと座り、周りをコソコソ見回しながら授業が始まるのを待っていた。
そんな時、扉が開いてピンク色のコートを来た彼女が入ってきた。あ、この子と仲良くなりたい。一目でそう思った。
どこに座るのかなって目で追うと、なんと彼女は私の隣の席についた。
あれから15 年以上経った。頻繁に連絡を取り合うわけじゃないし、めったに会うことはないけれど。今でも大好きな友人のひとり。
真夏の太陽の下、バルコニーに置いているヤマホロシの苔玉に薄紫色の花が咲いている。
暑い日差しに耐えながら洗濯物を干す私の、ちょっとした心のオアシス。
花たちだって暑いだろうに、文句も言わずにキレイな姿で私を癒してくれるんだね。ありがとう。
いつかは散る運命だけれども、1日でも長く咲いてくれますように。そう願いながら、苔玉を水に浸す夏の朝。
パソコンで写真のデータを整理していたら、生まれたばかりのあなた達の写真が出てきてふと思った。もしもタイムマシーンがあったらって。
タイムマシーンがあったら、あなた達を初めて抱っこした日に戻りたいな。
こわれてしまいそうなぐらいに小さくてか弱くて、それなのに両手では抱えきれないほどの愛であふれたあなた達。
何よりも貴重な瞬間を、もっともっとじっくりと味わっておけばよかった。あの時の感動はもう二度と味わうことができないから。
だからね、すべての瞬間を楽しみながら生きることにしたよ。大切な時間は過ぎてからじゃないと気付かないものだから。