ミッドナイト
真夜中は好きなほうだと思う。
でもこの時間帯を楽しむことは難しい。
早朝からの活動を余儀なくされている僕は睡魔に勝つことができない。
僕の生活は実に『健康的』だろう。
こんな生活を長いこと続けていると夜更かしをしてみたくなる。
…なんて考えたけど、この正確すぎる体内時計は狂うことを知らない。
不健康で不健全な道をみてみたい。
僕は真夜中に憧れていた。
安心と不安
「『アンビバレンス。
ある対象に対して相反する感情を同時に持つこと』
…難しいなぁ、こんなカタカナ覚えられないよ」
「そもそも『相反する感情』って
どんなものがあるんだろう?」
「うーん、例として『愛と憎しみ』って書いてあるよ」
「好きと嫌い…とか」
「安心と不安とか?」
「自分で言っておいて
安心と不安を同時に持つ状況ってわからないな…」
「そう?私はそれが一番しっくりくるかな」
「そうなの?…例えば、どんな時?」
「…ほら!恋愛漫画とかであるでしょ?
好きな人といる時は安心するけど、
この気持ちが相手にバレたら…って不安、みたいな」
「そういうものなのか」
「そういうものだよ、君は恋愛もの興味ないから
わからないかもしれないけど」
逆光
いつも僕は真っ黒になっている。
人々のレンズには僕という被写体だけが暗く、色彩が失われた状態で写るらしい。
見られたくない僕にとっては都合がいい。
だけどいつも僕のそばに来て逆光をつくる君のレンズにだけは鮮明に写っているみたいだ。
そんな君は今日も僕を写して笑う。
君の眩しい光を一番近くで浴びて、君の暖かい光を一番近くで感じることができるこの場所は…
やっぱり僕にとって都合がいい。
こんな夢を見た
白い。全てが白くて何も無いことがわかった。
全てが見えた。
自分以外誰もいない。何も無いことだけが事実として瞳に映った。希望が失われた。
…? "希望が失われた"?
何かを失った感覚なんて無かった。
元々希望なんて無かった。
ただただ何も無かった。