涙の理由
理由なんてない。
一度流れてしまうともう、どうしようもない。
やめろやめろやめろ
とまれとまれとまれ
呼吸が、鼓動が速くなる。
ああほら、反応に困ってるじゃないか。
なんでもないよって言え。
声が出ない。どうして、
"どうして泣いてるの"って自分でもわかんないよ…
やめてくれ、君は悪くないんだ。
そんなに優しくしないでくれ。
全部、俺のせいなんだ
好きな色
"好きな色は何ですか?"
迷うそぶりもなくピンクと答えた。
多分、理由なんて無かった。
少し悩んで青と答えた。
子供っぽいのが嫌だった。
暖かみがあるからオレンジと答えた。
まともな理由があった。
どんな色にも染まるから白と答えた。
どんな色にも染まらないから黒と答えた。
何処からか拾ってきた言葉を並べていた。
今までの回答に本心はあったのか。
これからの回答に本心はあるのか。
"好きな色は何ですか?"
「私の好きな色はーー」
降り止まない雨
俺は引きこもりだ。
だけど雨の日だけは外に出る。
雨にあたっていると嫌なものが流される気がして。
世間から守ってくれる気がして。
それに傘もささず歩いてるなんて
どこかの主人公みたいだろ?
さあ今日はいつまでこの時間が続くだろうか。
行くあてもなく歩き続ける。
雨が降り止むまで。
ところにより雨
「あー…」
降ってきたか。
もちろん傘なんて持っていない。
下校時間に合わせるように降り始めた雨を少し睨む。
勢いは増すばかりだ。
「はぁ…」
どうしたものか。
「あれ、傘持ってないの?」
声の方を向く。友人がいた。
「あはは…帰れなくなっちゃった」
「傘、入る?途中までだけど」
「いいの?」
「うん。それまでに止むでしょ
止まなかったら近くのコンビニまで送ってあげる」
「ありがとう」
二人が入るには少し小さな傘。
お互いが濡れないようピッタリとくっつく。
あったかい。
友人とはいえ相手に触れることなんて滅多にない。
そう考えると鼓動が速まる。
伝わってしまわないだろうか。
少しでも離れようとすると
"濡れるでしょ"と言わんばかりに近づいてくる。
その度に心臓が跳ね上がっていた。
「じゃあね。また明日」
そう言って歩いていく彼女を見送る。
別れる頃には雨が上がっていた。
少し先のコンビニを一瞥する。
「もう少し降ってたらよかったのに」
不満げに言う私は表情を崩していた。
もっと知りたい
君を知りたい。
だから私は君を見る。
気づかないよう、こっそりと。
勘付かれないように。バレないように。
だから私は君の話題を聞く。
誰が話していても、聞き耳を立てる。
もちろん、君の言葉も聞いている。
だから私は人脈を広げる。
多くの人から情報を得るために。
そして私は、、、知ってしまった。
知りたくなかったことを。
だから私は…