『見つめられること』
あなたにみつめられるだけで、こんなにも嬉しいだなんて
『まいはーと』
わたしのむね、ときんときんと音を奏でる。
きみのむね、どくんどくんと高鳴る。
今日こそきみと、誓いを立てるわたしの心
『ないものねだり』
幸せっていいな、楽しいっていいな。
おかあさんがいていいな、嬉しそうでいいな。
暖かい布団で寝れていいな、話し相手がいていいな。
なんでもないものねだり
『好きじゃないのに』
僕の好きなものはかわいいフリルやレース。
それとお人形。
かわいいもの、美しいものが好きなだけ。
彼女たちは引っ込み思案でいつも下を向く僕に、前を向ける強さをくれた。優しいあの人との会話を生んでくれた。
僕は君たちがいれば幸せなのだと、いつも彼女と話しかけた。幸せだった。楽しかった。
なのにそれを周りは許さなかった。
「おとこなのに人形遊びが好きなんて変なヤツ!」
「神田くんて女の子遊びなんてするんだね。気持ち悪い」
「なんで他の子みたくできないの?」
うるさいな、うるさいうるさい。
僕はこの世界で生きていくんだ。
彼女たちだけいてくれたらいいんだ!
そう思っても成長していくたびに変化していく自身が憎かった。変声期を迎えた、声が低くなった。
第二次性徴期が来た、肩幅が伸び可愛い服を着れなくなった。望んでないことが次から次へと襲ってくる。
彼女たちとの共通点がなくなっていく。
いつしか僕はおとこになって、周りに合わせた服を纏う。
『ところにより雨』
私の友人には雪女がいる。
彼女はとっても綺麗だが表情が氷のように無表情だ。
おまけに纏う雰囲気も凍て付いて、周りを寄せ付けない。
近づけばマイナス100℃の空気によって手も脚も微動だにすることはできないのだ。
そんな彼女の前に今、実に疎ましい男がいる。
彼女にとって唯一の友人である私とともに都会に来た際、声をかけた茶髪ピアス。チャラチャラした見た目の彼はこちらには振り向くこともせず隣の雪女に声をかけた。
無論、雪女は気にすることもなく恐ろしいほどの無表情で相手を見据えていた。それでもなお挫けずアタックする茶髪ピアス。彼女は限界を迎えていた。
いい加減退いてください、そう自分が言いかけた瞬間、彼女の身体から鋭い冷気が噴する。それをまともに食らった彼は一瞬理解の及ばないことに瞳をぱちくりと瞬いた後、急ににかっと笑い出す。
「俺ちょうど暑いと思ってたんでありがたいっす!」
冷房の故障なんじゃなんだと宣う彼。
そしてその彼を無表情に、否若干頬を染め相手を見る雪女。
それに気づいた私…。
つい先程までの吹雪く雪が一変、雨漏りする。
凍てつく彼女の心をふにゃりと溶かした彼を素直に賛辞を胸の内で唱える。感動的な場面だ、そうなるはずだ。
ただしかし、これだけは言わせてほしい。
雪女、ちょっとちょろすぎやしないかな。
とけたこころはあまい雨となって二人に降り注いだ。