ベルの音
ベルの音が聞こえる
自転車のベルのような気がする
それにしても何度も鳴る
今は真夜中でここは2階なのに
やっぱりベルの音が聞こえる
むしろ近づいてきた気がする
もうほとんど窓のすぐ下で鳴る
立ち上がって窓を開ける
道路を見下ろすけど誰もいない
何もいない 見えない
でもベルの音が聞こえる
窓を閉めて布団に入る
何かがもぞもぞ動く気配
耳元でベルの音が聞こえる
寂しさ
ひとりで家にいるから寂しい
というのはありきたり
都会の喧騒の中で寂しい
というのもバリバリ既視感
寂しさに貴賤はないとする
軽重はあるとする
浅薄深慮があるかは知らない
寂しさと孤独の関連は後ほど考慮する
さて私は冬の夜空を見上げ
昔習い覚えた星座を探す
おうし座のプレアデス星団を探す
寂しさを味わいたいなら
冬の夜空を見よう
星でさえあんなに寄り添って光る
冬は一緒に
連絡は突然だった。何年連絡していなかっただろう。自然消滅したはずの昔の恋人からのLINEに私が反応してしまったのは、つまり、失恋したばかりだったからだ。久しぶりだね〜と返すと、冬は一緒に過ごさない?と言ってきた。なんか知り合いの別荘を借りられるので泊まらないか?とのお誘い。ちょいと悩んだが出かけることにした。直近の失恋より昔の恋よ再び。約束の別荘に着くとそこは葬儀会場だった。戸惑う私の耳元で何かが囁く。冬は一緒に過ごそう? 血の気が引く。目の前が暗くなってゆく。私死ぬのかな。死ぬんだろうな。
とりとめもない話
そういや人間くらいの大きさのバッタに追いかけられた話はしたっけ?
私も聞いたよ、伊栖之湖に原発あって、ちっちゃい博物館あるでしょ、あそこの芝生を歩いてたらさ、でかいバッタが…
いやそれは知らんけど、伊栖之湖ならヒョンの島に変な話が。
それ綺麗な女の人がまねくとかいうんじゃなかった?
何言うてんのよ、綺麗な女の人ならここにいるでしょうが。
ママ、水割りもういっぱいちょうだい!
酔った人間の話はとりとめなくていいなと思うぼくの本当の姿は巨大バッタなんだけど、内緒にしてね。
※※※
うるせぇやつら帰ったな。
でかいバッタの話だろ? おまえのお得意の話じゃないのか。
マスター、俺もうその話したくないんだよ。若気の至りで痰壺掲示板に書いた話だぞ。
でも本当に、バッタはいたんだろ。
いたよ。小学生の時だよ、伊栖之湖原発の小さい博物館の芝生で、すっごいでかいバッタをとったんだ。13.5cmあったよ。標本にして学校に持ってったらえらい叱られて親まで呼ばれてさ、なんだったのか俺も知らんよ。
忘れといたほうがいいのかねえ。
そうだよ。でかいバッタはいるんだ。どこまででかいか言っちゃいけないんだよ。
※※※
気が向いたら「原発 バッタ」で検索してみよう!
何でもないフリ
フリというからには「何でもないフリ」は実のところ「何でもない」ものではないのよね。実は大問題が起きてるようなとき、たとえばスケートで優勝して表彰台に上がるのにお尻のズボンが破けてるようなとき破れをヘルメットで隠しつつ「いやあなんでもないよ!平気だよ!気にしないでね!」と笑うアホウのために「何でもないフリ」とう言葉は存在するし、そういうのが様式美。でもね、あなたがやってるのは違う。やられたのでしょう。あたりを我が物顔に跋扈するあの異界生物たちに噛まれたか刺されたかしたのでしょう? それを隠すのは様式美ではないわ。何でもないフリをされて困るのは私たち、いや私たちと過ごしてるこどもたちなのよ、だってそれは感染するのだから。観念して治療されなさい。