佐々宝砂

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12/5/2024, 10:36:27 AM

眠れないほど

眠れないほど憂鬱だということはない。
いや鬱病で眠れなかったことはあるけど、
眠れないほどつらいとかじゃないんだ。
単に眠れないんだ。

とりあえずいま眠れないほどかゆい。
病気のせいだし通院してるから、
ちゃんと対策はとる、
錠剤を飲み軟膏を塗りたくる。

抗ヒスタミン剤とステロイド軟膏、
これがないと眠れないし、
あったって眠れないほどアトピーがかゆい。

だからステロイドを悪魔だなんていうな、
わけのわからん民間療法を勧めてくれるな、
わたしはゆっくり眠りたいんだ。

12/4/2024, 11:07:15 AM

夢と現実

夢と現実? その違いが坊やにはわかると? ひっひっひ。わかるわけないわなあ。そもそも坊や、夢の中で夢と気づいたことがあるかね? 話はそこからだ。夢が夢であると認識できないとしたら、夢と現実を分けて考えることはできていないということだ。なので坊や、まず夢をみてごらん。そしてそれが夢だと気づけなかったら坊やはそこでおしまい、凡人のままだ。

バーチャルリアリティは要らんよ。人は好きなだけ夢を見る能力を持つ。ただし夢は夢と気づいたほうがいいの。夢と気づいたら目の前にある扉を優しくノックしな。まあ夢と気づいた時点で遊んでみるのもよい。

夢の中で夢と気づくとはその夢世界の神となることである。空も飛べる。海はいくらでももぐれる。金鉱山も掘り放題だ。各地の珍味も食い放題に食えるし、実は夢の中でもきちっと味はあるのだと坊やも経験するであろう。おお、それをいうたら男と女のことも夢の中で思う存分に味わえるぞ。

しかし坊や、夢に溺れるな。夢は楽しい。現実を忘れるほど楽しい。でも夢と現実をきちっと分けて考えな。そのとき坊やの前に扉が現れよう。その扉の先でこの婆は待っていよう。私が死んでても問題ない。夢を夢と気づいたとき、坊やの前に現れるもの、それこそが現実だ。さあ目を閉じて、今夜はおやすみ。

12/3/2024, 1:09:32 PM

さよならは言わないで

おまえバカだな。昔からそう思ってたけどほんとにバカだな。さよならは言わないでって真面目に言ってるのか? 不真面目だったらもちろんそれはそれで俺は怒るが、おまえもそこまでバカじゃないだろ。これが間違いなく別れなのはおまえだって知ってるはずだ。人類初の未来に人を送る事業…これは冷凍睡眠であって俺が未来に目覚める保障もないが、俺がちゃんと未来に送られるとしてももうおまえには二度と会えないだろう。それでも冷凍睡眠槽を閉めるときおまえはさよならは言わないでと言って微笑んだ。おまえはどんな思惑があるのか少しは想像できる。おまえはAIの研究者だ。おまえという自我を冷凍睡眠でない方法で保全しようとしていた。それがどこまで可能か。俺は凍り付いたまま待ってみよう、と思いながら俺の思考は途切れてゆく。未来へ続く眠りだと信じている。

12/1/2024, 12:26:32 PM

距離

他者とは距離を置かねばならない。私たちはこどものころからソーシャルディスタンスを学ぶ。いつからそうなったのかも一応学ぶ。コロナという肺炎が流行ったころからだと教科書に書いてある。私は中学校の教室で、適度な距離をあけて隣のクラスメートと話をする。私はいちばん仲の良い彼女とも触れ合ったことがない。いつでも私とあの子のあいだには適切な距離。…先生。適度な距離、適切な関係とはなんですか。ハグをするのは大切な人とだけと教わりました。大切な人は友人でも同性でもいいのではないのですか。…本当の私は先生にそんなこと聞けなくて彼女と今日も適切な距離をとる。彼女は鳥のように首をかしげて微笑む。適切な距離。適切な距離。私は呪文のように唱える。他者とは距離を置かねばならない。でも、彼女はたぶん私にとって他者じゃない。

11/30/2024, 11:59:40 PM

泣かないで

泣かないでと言うのも言われるのも嫌いだ。泣きたい人は泣けばいい。泣いてるのを見たくないなら泣く原因を考えて悪い涙ならその原因を取り除けばいい。そりゃ簡単なことじゃないけどさ、なんてひとりごちたら涙が出てきた。しかも止まらない。別に悲しいわけでもないのにとろとろとろとろ涙が出る。これは病気じゃないかと思って眼科に行くと、駐車場はいっぱいで病院入り口から長い列が伸びて、みんなみんな泣いている。何事かと列の一人に聞いてみると日本中でみんな涙が止まらなくなったらしい。天の誰かさんは「泣かないで」と思ってたりするのだろうかと空を見上げれば雨がぽつぽつと落ちてきた。この雨はやまないのではないかと嫌な予感も落ちてきた。

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