神様だけが知っている
ビーチ・ボーイズは脳天気に聴こえるから嫌いだと思いながらビートルズのリボルバー聴いてた夏。ラジオから聴こえたビーチ・ボーイズのGod only knowsの音がわたしの耳を焼いた。ビーチ・ボーイズのどうしようもない暗黒も、わたし自身のこの暗黒も、まわりの人は誰一人わかってくれなかった。でも今はそうじゃない。わかりやすくヤンデレという言葉もできたしいい時代になった。定義されて単純化した気もするけど。わたしの年? わたしグルーピーの化身の妖精よ? 年齢なんかないの! 女の年齢は神様だって知るべきではないのよ!
この道の先に
コンクリート舗装の曲がりくねった坂を登り、神社の門前通りに出た。昔ながらの土産屋と駄菓子屋の間にとても細い路地がある。この道の先にあるのだと訳知り顔の友人に言われたのだけど本当だろうか。バランス栄養食とスポーツ飲料をたくさん詰めたリュックを背負い直して一歩踏み出す。水に落とした水彩画のように景色がにじみ、ぼやけ、歪み始める。この道の先に何があるのか知らない。知らないけど、ずっと切望してきたものがすでにここにある。
日差し
「やあ、あんたに日差しはダメだったね」と言ってくれる人がいるのが不思議でたまらない。そういう親しい台詞を言う人がいなかったせいでどう答えていいかわからない。夕暮れ時の日差しくらいは大丈夫と言おうとしたが夏至すこし過ぎた夏の日もすでに暮れて暗い。日差しは鬱陶しいものでしかないし足元に絡みつくこいつらはなんだ、犬は苦手なんだと言っておいたのに。でもなんだろう、こんなに懐いて言うことを聞いてくれる生き物を私は知らない。夏至の日差しは、この時刻にはさすがに暗くなり、日差しの問題ではないのは私にもわかる。明日からは話し合おう。でも今夜はおやすみ。
***
昨日はだいぶ酔って書いたので意味がわからない…
窓越しに見えるのは
船の窓は小さいが、そこに見えるのは極彩色の雲だ。こんな雲みたいに見えるとは思わなかった。星虹がこんなものだと予測した科学者はいただろうかと自問して、いたかもしれないなと考え直す。とりあえず小さな窓の向こうは恐ろしいほど美しい。煌びやかな彩雲の向こう、手招きする白い手が…? え? 白い手があんなとこにあるわけないだろ! おい画像解析班! 解析班は外に出ましたって、いま外に出ると死ぬだろ! 何してんだよ! 船長たる俺は宇宙船の小さな窓を見る。小さな白い手が俺を招く。そうだ。俺はあれに答えなくちゃいけない。そうだよね。美しいスターボウよ。
赤い糸
「小指につながる赤い糸なんて嘘だと思ってるな」
とそいつは言った。
飲み屋で隣にいただけの男だ。
もちろん名前も素性も知らない。
「そりゃ赤い糸なんて都市伝説だろ」
「さあね。とりあえずあんたの赤い糸は西の方角に伸びてるよ」
「え?」
正直驚いた。
付き合い出したばかりの彼女はこの街の西に住んでいる。
「いいよね、みんな普通に西や東や南や北、最悪でも地面の下に伸びてるんだ」
「いや地面の下ってなんだよ」
「ブラジルに運命の人がいたらそうなるでしょ」
「それはまあたしかに。ていうかその他にどこに伸びるんだよ」
そいつはかすかに苦笑した。
「俺の赤い糸は天に向かって伸びてるんだよ」