佐々宝砂

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6/11/2024, 10:27:19 AM



「六月の夜の都会の空、そうそれは素敵ね」とたいして素敵だと思ってない顔で彼女がいう。街の夜空は明るくて星があまり見えないので彼女は街が嫌いだ。そのくせ淋しがりの彼女は夕暮れちょっとすぎにこのバーにやってきてマンハッタンを注文する。ウイスキーに甘味と苦味、ぼくはいつものようにマンハッタンを作り彼女の前に置く。彼女は美の女神、街におりてきたヴィーナス、街の夕空で孤独に輝く金星の化身もたまには酒を飲みに来る。

6/10/2024, 10:28:10 AM

やりたいこと

todoアプリを使うのが苦手でゲームっぽくなってるのとか予定をこなせたらごほうびもらえるのとかやってみたけどダメで、やりたいことってなんだろなあと呟いたらスマホが反応して言い出すには「やりたいこととやるべきことは別です」、そうだよね、なんで忘れてたかな、やりたいことは決まってんのよ、秘密結社のトップだもんあたし、目指すは世界征服と人類絶滅! でもとりあえず晩御飯つくろ。

6/9/2024, 10:34:37 AM

朝日の温もり

何年振りだろうかと自分に問うてみるが、思い出せぬ。Interview with the Vampireを見たとき映画の朝日では感慨はあまりないなと思ったのを思い出すが、あんなのはごく最近のことだから思い出せるだけだ。長く生きた。もう消えてよいと思う。カーテンを開けて東の空を見つめる。日が昇ってくる。案外暗い。思い出にある朝より寒い。しかし確実にこの身を焼く朝日、その温もりの懐かしさよ。

6/8/2024, 10:22:41 AM

岐路

私は毎日岐路に立つ。朝の窓を開け放ったとき、お昼どきのコンビニで小銭を落として放置したとき、アサヒとキリンとサッポロとサントリーとどれにしようか悩んで結局奮発してヱビスにしたとき、私は毎日どころか毎分ごとに岐路に立ち、朝の窓を開けない私、小銭をきちんと拾う私、ヱビスじゃなくてバドワイザーを買う私、無数の私が無数の宇宙で、さらに毎秒ごと岐路に立ち分裂してゆく。

6/7/2024, 10:25:39 AM

世界の終わりに君と

いやだめだこれはつまらなさすぎる。世界の終わりは一度しかないと君は思ってんのか。クソつまらんな。僕は夜の屋上に立ち世界を見下ろしながら君に命ずる。君の世界は今から終わる。世界の終わりに君は僕と踊れ。君の世界は今後何度も終わる。僕が保証する。すべての世界が終わるとき君は僕の言葉の意味を知るだろう、ほら、今この瞬間にも君の世界が、僕の世界が、すべての世界が、終わる。

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